平成17年(ワ)第3018号
売買代金返還請求事件
陳述書
平成17年5月10日
原告本人
東京地方裁判所民事部第七部 御中
目次
被告(東急不動産株式会社)準備書面には誤字があり、内容も不実なことだらけで驚いている。被告には再調査をお願いしたい。被告は2004年12月12日の協議の席上、アルス(本件マンション)担当者が途中で交代したと説明しており、前任担当者との間で十分な引継ぎ・情報共有がなされていないように見受けられる。被告住宅事業本部第四事業部の野間秀一課長・関口、被告窓口井田が全てを知っている。
被告主張「原告主張の建物が、同主張の頃建築工事に着工されたことは認めるが現状ストップしている」について
工事停止は、被告が原告に北側建物建替えについて何ら説明せずに販売したことをW氏が知り、かつ、それについて被告は独自の論理で正当化するのみで謝罪をしないどころか何ら誠意ある対応をしなかったためである。
尚、被告の対応に問題があったことは、被告自身が書面で認めている。即ち、12月16日付けの手紙で下記のように自社の対応を問題と認め、表面的には謝罪した。
「原告様からのご指摘がありましたご返事が遅れた点、これまでの弊社並びに東急リバブル担当の対応が不十分であった点、また、弊社と東急リバブルとの連絡が不十分であった点については深くお詫び申し上げます。今後このような事がないよう善処させていただきます。」
工事がストップしている理由は上述の通りであるため、工事はいつでも再開できる状態にある。従って工事が停止しているから不利益事実が生じていないとの主張は成立しない。
工事が上述の理由で停止していることは、2005年1月13日に被告の野間秀一、関口、井田、大島聡仁がW氏宅を訪問した際にW氏から説明されており、被告も了知している筈のものである。その際にW氏は被告に対し、「原告に訂正文を出して謝ってくれ、それまで工事はストップする」と発言している。
被告主張「壁工事などは未だ未施工」について
「未だ未施工」と「未」を重ねたことによる文意は理解できない。二重打ち消しを素直に解釈すると打ち消しの否定で肯定となり、意味が通じない。ここでは単純に壁工事が未施工と解釈する。
北側建物は2003年8月以降、鉄筋の骨組みが出来上がっている状態である。この時点で工事用の幕が建設中の建物全体に覆われたことにより、日照・眺望が遮られ、真っ暗な状態となった。その後、W氏の厚意と配慮により、幕が外された。被告にW氏の万分の一でも厚意と配慮があれば、本件が訴訟にまで至ることはなかったと思われる。
また、現在未施工であるとの主張は、施工されれば日照・採光の妨げられることを否定するものではない。
被告主張「些か理解し難い」について
「些か」とは「数量・程度の少ないさま。ほんの少し。わずか」の意である。もし「全く理解できない」「少しも理解できない」と主張したいのであれば「些かも」とすべきである。
被告主張「採光は原告主張のとおり2方面から得る設計になっており」について
被告は全ての部屋が2方面の採光・通風を享受できると主張したいようであるが、北側しか採光部のない部屋の存在を無視している。北側しか採光部のない部屋では、その日照が遮られれば真っ暗になるのは自明である。
図面集の間取り図記載のとおり、本件マンション301号室は2LDKであり、一部屋だけのワンルームマンションではない。洋室は全て北側に面している。二面採光の一面にある二部屋が暗くなったと言っている。西側の部屋を言っているのではない。
被告は「西側があるから北側が潰れても我慢しろ。北側の部屋は諦めて西側に部屋だけで日光を浴びろ」と主張したいようであるが、一面の日照が奪われることを不利益と認めない被告の暴論は成り立たない。被告は二面採光・通風を売りにして販売している(後述)。二面採光で販売したのであるから、一面が潰れてももう一つがあるからいいという主張は通らない。商品価値はなくなる。被告は自社の主張を正当化するために無理な論理を展開している。
被告主張「中田は、物置ではなくて、作業所兼物置と説明していたはず」について
中田は物置、資材置き場と説明した。作業所とは説明していない。そもそも中田の説明は口頭でなされたものであるが、口頭で「作業所兼物置」と漢字を並べ立てた言葉を使うことは一般的にも考えにくい。
アルスの二階居室購入者も東急リバブル・宮崎英隆から物置、資材置き場とのみ説明を受け、作業所であるとの説明は受けていない(後述)。
被告主張「眺望などは当時本件建物から見える景色(遊歩道の緑)を説明しただけ」について
マンション販売時に建物から遊歩道の緑が見えると説明することは、アルスの利益となる事実を説明したことである。
被告主張「「2面採光で心地よい空間を演出します。」との記載も無い」について
被告は勝手に「Buon Appetito!」(甲6)を引用して記載がないと結論付けているが、そもそも引用する資料が異なっており、記載がないのは当然である。
図面集は「上質な暮らしを深める邸宅」と題して「独立性の高い立地を活かした全戸に開放感ある角住戸を実現。風通しや陽射しに配慮した2面採光で、心地よい空間を演出します」と記述する。
この文言については原告作成被告宛ての文書(2004年11月2日)にて引用した上で「東急不動産はこの広告の部分が数ヶ月で失われることを知っていて故意に契約者に告げず、高い価格でマンションを売った。わずか数ヶ月で3階建ての隣の壁で一面が真っ暗になってしまった。詐欺にも等しい不法行為に当たる」と記述した。
被告が原告からの手紙を真面目に読んでいるならばよくわかっているべき文言である。そもそも図面集自体、被告が作成したものであり、原告の指摘を受けるまでもなく、熟知しているべきものである。被告が自社物件の売り文句に対し、いかに無責任であるかをうかがわせる記述である。
被告主張「通風・採光について格段良さを謳ってはいない」との主張は成り立たない。
図面集の記述に加え、チラシ「マンション選びのポイント」には「緑道に隣接するため、眺望・採光が良好!」「全戸角住戸!2面以上の開口・採光を確保!」と記述している。
一方、アルスには日照・眺望・通風以外には目立った利点はない(後述)。即ち、アルスは日照・眺望・通風を強力なセールスポイントとしたマンションであり、それらが失われれば社会経済的にもさして価値のない建物になる。
被告主張「本件北側建物も建築着工時期について知らなかった」について
W氏は「アルスの建設後、すぐに建てる」と説明している。(後述)
2004年12月12日、東急リバブル渋谷センター(渋谷東急プラザ6階)にて原告と被告は協議した。被告は東京都都市整備局に呼び出されたため、原告と話し合いの場を持った。これは原告が同局住宅政策推進部不動産業課に面談に行き、被告の詐欺的商法及び不誠実な対応を訴えたためである。行政の指導が入らなければ、原告からの回答すらまともに返さないのが被告の対応であった。
協議の場において、被告の野間課長は原告に対して「井田から聞いて全部知っていますよ。会社の判断で告げないことに決めました。言いたくても言えなかったのですよ。Wさんとの約束を破ったことは悪いと思っています。近日中に謝りに行きます」と話した。
被告主張「本件建物の採光・日照が喪失することなどを承知していない」について
被告は北側隣地に三階建ての建物が建てられることを知っていた。
隣地に三階建ての建物が建てられれば、アルスの三階以下の日照・採光が喪失することは当然のことである。隣に壁ができれば、日がささなくなることは小学生でも分かる自明な理屈である。
W氏が三階建てに建替えられることを購入者に説明・警告することを被告に依頼したことも、そのためである(本依頼は被告により反故にされた)。
被告主張「「日照が喪失」との主張は理解し難い」について
日照が享受できなくなると主張している。
被告主張「被告が原告に対して、「不利益となる事実を故意に告げなかった」との主張は争う」について
被告は隣地に建替え計画があることを知りながら、原告には告げなかった。知っていたにも関わらず伝えなかったのであるから、故意である。不利益事実を告知すれば本件建物が売れなくなる、ないし、販売価格を下げざるを得ないために、意図的にその事実を告げず、よって購入者に損失を与えたことは明白である。
被告はW氏と工事承諾などの交換条件で、本マンションの二階及び三階の購入者に隣地建物建替えについて告げる約束をしたが、不利益事実を告知すると本件建物が売れなくなることを恐れて、W氏との約束を反故にして、二階購入者及び原告には三階建ての建物が建つ旨を告げなかった。
被告主張「原告が訴外W氏からその主張の頃事情を聞いたこと、同W氏の話に関しては何れも不知」について
原告がW氏から事情を聞いたのは、東急リバブル住宅営業本部営業第五部・今井由理子及び宮崎英隆が9月に原告宅を訪問した際に今井よりW氏に確認することを求められてのことである。
原告宅において今井は「誰一人としてW氏の話を聞いていない。誰も知りません。W氏が誰に言ったのか調べてください」と言った。原告は被告の依頼を受けて、W氏より再三再四に渡り経緯を聞いた。原告は被告と販売代理の関係にある東急リバブルから依頼されたため、W氏に事情を確認した。しかしながら実は被告は被告窓口担当である井田より全てを聞いて初めから知っていた(2004年12月12日の発言)。
加えて原告はW氏と被告の説明が大きく食い違っているため、被告からもW氏に直接確認するように再三依頼し、W氏の連絡先までも提示した。しかし被告がW氏に確認することはなかった。その後も被告は原告の問い合わせ要求に対し、被告の主張を繰り返すのみで、W氏への調査・確認は何らなされていない。
どうして被告がW氏に確認しないのか、不思議であったが、その理由は後日解明する。被告は初めから全てを知っており、確認すると嘘が発覚してしまうためである。2004年12月12日の協議の席上、被告は「被告窓口担当である井田より全てを聞いて初めから知っていた」と回答した。
被告及び東急リバブルは初めから知っていたのならば、原告に調べさせる必要はなかった。原告に調べさせる必要はないのに、知らないと嘘をついて原告に調べさせたのである。
原告による再三再四の確認で事実が明らかになるにつれて被告の表現がコロコロ変わることには驚いた。東急不動産は大企業だから信用があるなどとはとんでもない。一生に一度の高価な買い物で嘘をつかれて騙されたという不安・不信と会社ぐるみで知識のない消費者を嘘で誤魔化す不誠実な対応に悔しさで腸がちぎれる思いをした。
被告主張「最も、被告は、同W氏から本件マンション建築前において2回程度本件北側建物の建築について事情を聞いており、その趣旨を本件契約における重要事項説明において、原告にも伝えていた」について
「最も」は「尤も」の誤記であるように思われる。そのように理解しなければ文意が通らない。
W氏が被告担当者の関口氏と会ったのは一、二回程度であるが、被告の窓口である井田とは何度も会っており、建替えの説明も二階と三階の購入者への説明の依頼も何度もしている。井田からも「何階建てにするのか」という確認が何度もなされた。
被告主張「被告が訴外W氏に対して本件マンションの窓の仕様を説明したことはないし、本件マンションを案内したこともない(訴外康和地所の担当者井田がかかることをしたかどうかは不明)」について
井田は康和地所の従業員とされるが、マンション建設地が康和地所から被告に譲渡された後は被告の窓口として行動している(後述)。従って井田の行為は被告の行為であって、都合の悪い場面では「康和地所の担当者井田」として有耶無耶にすることは卑怯卑劣極まりない。
また、本件は井田の独断でなされたものでもない。施工会社である株式会社ピーエス三菱(旧三菱建設)の山下工事所長に案内されて、本件マンションの八階から二階まで全階の窓を確認している。
二階、三階の窓だけ透しガラスから曇りガラスに変更されたことは、大分後になって変わったことであるとの説明もW氏は受けている。
被告主張「被告作成の重要事項の説明が「一般的」な内容の記述であることを争い(と言うか原告の主張が不明)、不利益事実告知義務を免除との主張は争う」について
被告作成の重要事項の説明はW氏所有建物の建替えに言及したものではない。隣接する敷地の全てにおいて起こりうることを文字通り一般的に述べたにとどまる。ここには被告がW氏から受けた説明や依頼は何一つ反映されていない。詐欺にも等しい明らかな不利益事実告知義務違反である。
被告回答文書(2004年12月16日)においても「将来建つ可能性があるものとして(W様に限らず)、重要事項説明書にある「周辺環境について」との項目に記載をさせて頂きました」として、重要事項の説明が隣地建替えに特化したものでないことを自認している。
また、2004年9月19日に東急リバブル・今井由理子、宮崎英隆が原告宅に訪問した際も、原告側の「重要事項での周辺環境は隣地の建替えのことを記述しているのですか」との質問に対し、今井は「いいえ、一般的なものです」と回答した。契約時にも重要事項説明の周辺環境についての記述が隣地建物を指すとの説明はなされなかった。
被告準備書面を読む限り、被告は当初よりW氏の説明を把握していた上で購入者には説明しなかったことになるが、それは今井、宮崎の説明とは矛盾する。当初、被告はW氏の話を誰も知らない、誰も知らないというスタンスで原告に接していた。知っていたにもかかわらず、最初の問い合わせでは「知らない」と白を切り、原告側に無意味な調査を要求するのは不誠実極まりない対応である。
加えて、重要事項説明の説明者は宅地建物取引主任者(東京第145705号)の宮崎英隆であるが、宮崎自身、原告から問い合わせを受けた際は、隣地建替えの件を全く知らないと回答していた(後述)。
協議の場(2004年9月19日)でも今井、宮崎ともにW氏の「アルスが建ってからすぐ建てる」との発言を否定していた。今井は「W氏の話を誰も聞いていない。東急不動産にも問い合わせたが、誰一人としてW氏の話を聞いていない」と回答した。その上で今井は東急不動産担当者の名前(住宅事業本部第四事業部・松岡リーダー、野間課長、関口)を挙げ、「W氏はこの中の誰に告げたのですか。誰に説明したのか不明なので、W氏が一体誰に言ったのか調べてください」と原告に依頼までしている。
従って被告は隣地建替え計画を知らないで重要事項を作成したことになる。作成者が知らない以上、記載できるはずはない。重要事項説明はW氏の建替えのことは少しも考慮に入れずに書かれたことになる。よって重要事項説明は隣地建替えについて説明したものではなく、一般的に書かれたものである。契約時においてもその後も重要事項は当たり前のことが書かれている一般的なものとして取り扱われた。
被告主張「因みに、本件の争点と関係するが、被告は、消費者契約法所定の事業者であるが、同法が被告に一般的に「不利益事実告知義務」を負わせているわけではあるまい」について
反論については後述。一方でこのような主張をしていること自体、被告が不利益事実の不告知を認めているようなものである。
被告主張「被告は、原告に対し、本件建物にかかる「日照・眺望・通風・景観等の住環境に対する重要事項」に関して、「利益」を告げた事実はない」について
パンフレット等で二面採光・通風を謳っている。販売担当者中田愛子(東急リバブル住宅営業本部営業第五部)の説明においても、この点がメリットとして強調された。
景観についても北側に江東区立洲崎緑道公園の並木道が望めることを強調していた。パンフレットも背景色を緑としており、緑道との関連を強調している。
また、被告の主張するとおり、「日照・眺望・通風・景観等の住環境に対する重要事項」に関して、「利益」を告げた事実はないならば、アルスは日照・眺望・通風・景観等をセールスポイントとするマンションであり、それ以外には個性のない物件であるのだから(後述)、何のメリットも残らない物件となってしまう。マンションは、何ら利益となる事実を告げずに販売して売れるものではない。加えて、自ら販売した物件にはメリットがないと被告の自己否定を聞くのは悲しいものがある。
被告主張「被告は、原告から同主張の内容証明郵便を受領した事実を認めるが、その法的効力を争う」について
被告の販売は消費者契約法4条(不利益事実不告知)に該当し、原告による取消の意思表示がなされたのであるから、その法的効力が発生する。
被告に対して主張したいことはたくさんある。
・強引な販売方法
・契約後のトラブルにおける顧客対応の悪さ。
・不誠実、嘘で固めた回答、居留守、たらい回し、時間稼ぎ
契約締結時の経緯については後述する。
被告主張「被告は、原告に対し、本件契約締結時において、本件建物の北側隣地の建築計画(本件北側建物)について調査し」について
被告がW氏から説明を受けたこと以外に調査をしているのならば、その内容を具体的に明らかにされたい。2004年12月12日の協議においてアルスの担当者を自称する大島はW氏とは会ったこともないと発言している。
調査内容は準備書面記載のW氏との面談(2002年11月7日)に留まると解して良いのか明確にされたい。本面談は僅か数分間の立ち話でなされたものである(後述)。
被告主張「訴外井田氏は同W氏と平成14年8月前後から同所有の敷地に関して、共同開発などを含めて接触を持っていた」について
康和地所がW氏に最初に求めたことはW氏所有の土地の売却である。売却が断られると次に等価交換方式による土地の譲渡を求めてきた。共同開発の話はなされていない。
康和地所は「Wさんは土地を売らないでしょうね」と言ってきたので、「売らない」と答えた。
W氏は等価交換の提案も断った。等価交換方式とは隣地を売却し、マンションの一室を隣地の地価分割り引いた価格で購入できるというものである。
等価交換方式で建てられた物件については、書籍で「買ってはいけない原則や教訓」として「等価交換ものは避ける」と記載されている(根来冬二、買ってから泣かないマンション選び、築地書館、2000年、39頁)。購入者には好印象を与えない方式にもかかわらず、隣地土地を何が何でも取得しようとした康和地所の焦りが感じられる。
康和地所「等価交換方式によれば二千万円でマンションの一室が買えます」
W氏「土地を譲った上に、何で二千万円も出さなければならないのか」
このやり取りの後、すぐに被告とピーエス三菱になり、挨拶に来た。
尚、東急リバブル回答文書(宮崎英隆作成、2004年9月24日)は「東急不動産からW様へ土地の有効活用の方法として等価交換方式で「一緒に建てましょう」と言いました。その際にW様から等価交換ではなく、単独で「将来的に建替えたい」という希望はお伺いしました」と記述する。
事実は被告からW氏へ「一緒に建てましょう」との提案がなされており、宮崎の記述は誤りである。但し、ここでは等価交換の提案主体が東急不動産となっている点で、康和地所とする被告準備書面とも矛盾する。
被告主張「本件マンション竣工後地盤の様子を見てから建築すること」について
被告はW氏の発言を歪曲している。実際のやり取りは下記の通りである。
W氏の建替え計画を知った被告より、W氏に対して「一緒に建てましょう」との提案がなされた。これは同時期に建てましょう、との意味である。これに対してW氏は「地盤が緩むといけないので、アルスが建ったらすぐ建てる。アルスが建ってからだから、どうせ一年後になる」と断った。
上述の通り、地盤はあくまでマンションと同時期には建てないことの理由として持ち出されたものであり、被告が主張する「様子を見てから建築する」というような計画の不確定さを印象付けるものではない。被告としては「建築時期、建築内容等具体的な事実が決まっていない」とする主張に正当性を持たせたいがために、W氏の発言を歪曲したものと考えられる。
被告主張「建築内容は3階建」について
W氏が被告に対し、三階建てにすると説明した後も、井田からは何度も「何階建てか」と確認されたため、W氏は「三階より上は絶対に建てない」と約束した。以下のやり取りもなされた。
「何で三階なのですか。五階くらいにして上を貸せばいいのに」
「階段をつけなければならないし、そのためのスペースも必要になる」
作業所兼住居について
被告はW氏の説明を矮小化している。実際は、W氏は作業所兼住居に建替えるとの説明に続けて、「作業所なので騒音が発生する」と述べ、二階と三階の購入者に予めこのことを説明するように依頼し、承諾を得た。
これは被告自身、原告宛被告回答文書にて認めていることである。
被告回答文書(大島聡仁作成、2004年10月15日)
アルスが建ってからすぐに建てる旨、3階以上は建てない旨、住まいと仕事場が一緒になるから騒音がある旨の内容は伺っておりました」と認めている。
ここでは「3階以上は建てない」と書かれてあるが、これは四階以上の誤りである。正確な語義上は三階以上では二階までとなってしまい、話が通らなくなる。
被告回答文書(社印付、2005年1月9日)
平成14年11月時点でW様が康和地所井田氏を経由して、下記のご意向をお持ちであることは伺っておりました。
・アルスが建ってからすぐに建てたい。
・3階建てを建てたい。
・住まいと仕事場が一緒であるから騒音がある。
被告主張「建築(建替え)は間違いなくするがその資金調達はまだこれからであること、特に融資を受けていた永代信用金庫がダメ(倒産)になったことから、新たな融資先を捜していること、紹介して欲しいこと」について
被告準備書面によると、W氏の上記発言は建替えの説明の中でなされたように理解できるが、実態は全く異なる。
「紹介して欲しい」との発言は北側建物建替えの説明時ではなく、被告側からの「一緒に建てましょう」との提案の際になされた。本提案に対しては、W氏は「地盤が緩むといけないので、マンションが建ったらすぐ建てる」と回答して一度断っているが、被告は執拗に提案してきた。
それを断るための口実としてW氏は「金融機関を紹介してほしい」と言ったにとどまり、それはあくまで「同時期に建てるならば」との前提がついた話の中でのものに過ぎない。井田には何度もアルスの建設後に建替えをすることを伝えてあり、上記発言から、建築費用がないために当分隣地を建替えることはないと解釈する余地はない。
被告はW氏には融資してもらえる金融機関がなく、建築資金調達が困難であるため、建替え計画は不確定であったと主張したいようである。原告宛文書にも何度も記述されているし、被告が国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課に提出した本件に関する報告書にも記載されている。
しかし、これは虚偽であり、W氏を資力のない人間と貶め、侮辱するものであるため、当然のことながらW氏の反発を受けることになった。2005年1月13日に野間、関口、井田、大島がW氏宅を訪問した際に謝罪している。加えて2月18日に林、野間が訪問した際は、資金調達困難との記載は誤りとして被告が国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課に提出した報告書を訂正するとW氏に約束している(後述)。
被告主張「特に融資を受けていた永代信用金庫がダメ(倒産)になったことから、新たな融資先を捜していること」について
W氏は永代信用金庫の破綻については述べたが、「新たな融資先を探している」とは述べていない。永代信用金庫の破綻も井田との雑談で述べたものであり、建替えとは何ら関係のない話である。
元々、作業所はアルスの建設後に建設する予定であり、すぐに融資を受けなければならない必要は皆無である。そして金融機関は破綻してもしばらくすれば受け皿金融機関に継承されるものである。
また、ここは融資先ではなくて、融資元と考えなければ、意味が通らない。
被告主張「建築(建替え)工事をすることは入居者に伝えておいて欲しい」について
被告はW氏の依頼を矮小化している。W氏の依頼は三階建てが立つこと、住居兼作業所にするので騒音が発生することを伝えるように依頼した。依頼に対して被告は了解している。
井田は「責任を持って行います。引継ぎはしっかり行います」と回答している。
依頼に対する被告の同意を受けて、W氏は被告に対して工事承諾書を提出した。提出に当たり、建替え予定を購入希望者に伝達することを条件として同意の印鑑を押したと主張する。W氏は原告に「マンション購入者に説明することを条件として判を押した」と語った。
工事承諾後もW氏は建替えの話を何度もした。被告は原告宛文書で「その後、W様より具体的なお話をうかがっておりません」(2004年10月15日付回答、大島聡仁作成)と一度聞いただけのように主張するが、一二月にも話しており、その後も繰り返し説明・依頼している。
被告がW氏からの依頼を反故にした件については、12月12日に原告が被告と協議した席上で、野間課長から「Wさんに対しては謝罪しなければならないと思っている」との発言がなされた。
被告主張「訴外康和地所は、訴外W氏に対して、敷地境界をフェンスではなくて、ブロックまたはコンクリートにすること、本件マンションの北側の2階、3階の開口部を片ガラスにすることで検討することを説明していた」について
被告の主張は誤りである。第一に、この説明は康和地所ではなく、被告に譲渡され、マンションの建設が進んだ時点でなされた。W氏が康和地所から上記の説明を受けたことはない。
第二に一方的な説明であったように主張するが、実際はW氏とのやり取りの中で決まったものである。
当初の予定では敷地境界はフェンスであった。被告担当井田から「塀はフェンスでどうでしょう」と相談をした。これに対してW氏は「仕事場と一緒だから騒音がある。また、子供がいるのでフェンスだと壊すといけないからコンクリートにしてください」と回答した。井田は「助かります」と回答した。
このやり取りは本件マンションの建築途中の、基礎工事が終わって建ち上がった頃で、建築に着工した2002年11月からはかなり後であり、年月が違う。
窓についても訴状記載の通り、W氏が建築中のマンションから窓の位置を確認した後、「三階までを曇りガラスにしました。玄関右側六畳の部屋には窓が三つあります。一つだけ開きますが、後の二つは羽目殺しにしておきましたよ」との説明を受けた。
アルスでは二階と三階だけが曇りガラスで、四階以上が透明なガラスになっている。これは被告が隣地に三階建てが建てられること、四階以上は建てられないことを認識していたことを裏付ける。
後に井田はW