HOME

国土交通省の誤った対応

国土交通省は、イーホームズから偽造の報告があった当初、担当者が事の重大性を認識せず、緊急対応がなされなかった。企業のコンプライアンスを役人が論じても説得力は皆無である。

イーホームズの藤田東吾社長は2005年10月26日に国交省の担当係長にメールで偽造があった事実を報告した。「事態が重要なので、特定行政庁に通知する前に報告にうかがいたい」と記載した。しかし担当係長は「本件は申請者と貴社との問題」として取り合わなかった。翌27日に藤田社長から再度、メールと電話で連絡があり、次の日に面談を設定した。

この事実は構造計算書偽造問題に対する行政の対応を検証する緊急調査委員会(座長:巽和夫京大名誉教授)の初会合(2005年12月16日)で判明した。国土交通省の山本繁太郎住宅局長から、行政対応の経緯について説明がなされた。委員からの質疑で、山本局長は「重大性を認識したのは、11月7日に日本建築センターからの報告で、偽装内容が大幅なものだと確認した時だ」と回答した。

イーホームズの最初の連絡から12日後である。その翌日から、国交省は緊急対策に着手した(「重大性認識は第一報から12日後、緊急調査委で国交省」建設総合サイトKEN-Platz 2005年12月19日)。11月11日にユニオンシステム技術者がプログラム改ざんの可能性を指摘するが、暫く伏せられる。北側国交相に問題が報告されたのは11月15日である(「イーホームズ、偽装指摘取り合わず…国も大臣報告遅れ」読売新聞2005年12月5日)。

「国交省の罪を許すな!  イーホームズ社長 藤田東吾」フィナンシャル ジャパン2006年2月号

僕は、二〇〇五年一〇月二六日に、国土交通省住宅局建築指導課に相談したのですが、「課内で検討した結果、それは申請者とイーホームズの問題なので、報告しないでくれ」と返事してきた。
それで、「これは、認定プログラムの大臣認定制度の問題で、確認検査制度の問題ではない。宅地建物取引業法と建設業法に基づく、国交省が所轄する法律に基づく犯罪なので、通報しているんだ」という内容のEメールを送った経緯がある。

国土交通省、匿名情報の内容を伏せる

国土交通省には耐震強度偽装事件を発表する一ヶ月前にイーホームズの審査の問題点を指摘する匿名情報が寄せられていた。しかい国土交通省は当初、告発情報の内容を正確に発表しなかった。

国土交通省に情報が寄せられたのは2005年11月7日である(国土交通省・佐藤信秋事務次官)。関係者と名乗る者から電話があった。内容はイーホームズの帳簿の不備と、天空率審査に関する指摘であった(「「公表遅れ」指摘に反論=匿名電話は偽装と無関係−国交省」時事通信2006年1月23日)。しかし国土交通省は当初、帳簿の不備のみを公表し、天空率については伏せられた。天空率は採光や通風性を示す数値で、建築確認時に図面でチェックする。

民主党の長妻昭衆院議員は「タレコミの電話があったのに公表が遅れた」と国土交通省の対応を非難する。「帳簿を備えていないのと図面をチェックしていないのでは、明らかに問題の性質が違う。チェックの方がよほど重要です。この時、国交省がイーホームズのチェック体制に疑問を持って徹底的に調べていれば、もっと早く耐震偽造問題が明らかになり、多くの被害者が偽造物件を買わされるのを防げたかもしれない」(日下部聡「国交省が伏せた「匿名情報」の中身」サンデー毎日2006年2月5日号31頁)。

国土交通省、匿名情報でイーホームズに立ち入り

国土交通省は問題発覚直前の10月24日、イーホームズに立ち入り検査を実施した。検査は「イーホームズの帳簿管理は杜撰」とする匿名の情報提供に基づき、実施したと同省は説明する。担当者が情報提供に基づき、確認審査業務を記した帳簿を重点的に調べたところ、帳簿の目録を文書で一覧化していない問題が見つかった。

イーホームズは「コンピューターには保存してある」と説明したが、同省は文書で整備するよう行政指導した。立ち入りは一日で終わり、個別の案件まで調べることはなく、計算書の偽造は見抜けなかったという(「耐震偽造:発覚直前イー社に指導 匿名情報で国交省」毎日新聞2005年11月28日)。この立ち入り検査は不自然である。何故、国交省が立ち入り検査をしたのか。匿名の情報とは何だったのか。匿名情報が信頼に足るものと判断したのは何故か。

国交省検査の数日前にアトラス設計の渡辺朋幸代表がイーホームズを訪問している。ここで渡辺代表はグランドステージ北千住の偽装を指摘し、計画変更を提案したと藤田東吾社長は説明している。もし渡辺代表の提案通り、グランドステージ北千住を計画変更していたら、イーホームズは偽装隠蔽に加担したとされて抹殺されていた可能性がある。

たった一日で検査が終わっているのも不思議である。計画変更(公文書偽造)されていると思って調べたところ、偽造されておらず、驚いたのだろうか。イーホームズにグランドステージ北千住を計画変更確認させ、摘発することで、先制パンチとし、姉歯元建築士とイーホムズに全責任を負わせるような陰謀が存在した可能性を否定できない。

図書省略制度によるミスリード

11月17日に国土交通省が耐震強度偽装問題を公表し、「審査機関の過失の可能性」が言及される。国土交通省は図書省略制度を持ち出し、全ての責任をイーホームズに押し付けようとした疑いがある。報道も、「審査手順が守られていない」で盛り上がっていた。しかし、今回の問題は図書省略制度とまったく関係がない。国土交通省はメディアや、国民の目線を違った方向に誘導しようとしていた。

図書省略制度とは建築基準法施行規則第1条の3第1項に定められた構造計算書の作成において、大臣認定を受けたプログラムで構造計算を行った場合は、確認申請時の図書省略が認められる制度を指す。計算に利用したプログラムに関する図書(プログラムの処理手順を記述したもの)を確認申請時に添付しなくて良いという扱いである。

日本建築センターによる性能評価に基づき、国土交通大臣が構造計算プログラムを認定する。認定プログラムを使用し、そのプログラムに発行された大臣認定書のコピーを確認申請時に添付すれば、計算過程の出力を省略して提出することが省令で認められている。

現状では図書省略制度は、ほとんど活用されていない。確認検査機関では、計算過程をすべて含めた構造計算書の提出を求めることが多く、図書省略制度を利用している件数は全体の一割にも満たないという(「図書省略制度を巡って混乱、矛盾するイーホームズの説明」建設総合サイトKEN-Platz 2005年12月28日)。姉歯建築設計事務所による偽造計算書も、図書省略制度を利用していなかった。

図書省略制度は、「どの書類を提出したらいいか」という話である。問題の構造計算書は、書類は全て揃っており、図書省略制度とは全く関係ない。今回の事件と関係のない図書省略制度を持ち出して、話をややこしくする狙いが透けて見える。

国土交通省の責任

耐震強度偽装事件では民間検査機関を監督する立場にあった国の責任は重大である。国は建築確認制度の本質的欠陥を見過ごしてきた。行政の時代遅れの思考が耐震偽造を生んだとも言える。「特定行政庁や、民間でも自主的に調査を行っている」との呑気な答弁は許されるものではない。

「民間の検査機関に建築の審査業務を委託する規制緩和策にすべてが起因するとは言わないが、それを監督する「官」のあり方は厳しく問われる」(「【耐震偽装】誰が違法と知っていた」高知新聞2005年12月21日)。

「規制緩和で「官から民へ」の流れがあるが、チェック機能は十分であったとはいえない」(「居住者の安全対策迅速に」沖縄タイムス2005年12月1日)。

「耐震強度偽装問題では、地方自治体や民間の指定確認検査機関が偽造を見逃し、最終的にこれらを指導・監督する国交省もチェック機能をほとんど果たせなかった」(「[耐震偽装罰則強化]国の責任も明示せよ」沖縄タイムス2006年3月16日)。

国土交通省は、ほぼ毎年、民間検査機関イーホームズに定期的に立ち入り検査をしていた。しかし、国土交通省が同社の審査体制の不備を指摘することはなかった。偽造発覚後の立ち入り検査で初めて審査手続きの違反を指摘した(「ニューススポット」月刊ウェンディ199号、2005年、3頁)。

イーホームズ、大臣認定プログラムの不備を指摘

イーホームズの藤田東吾社長は偽装問題の原因について「(構造計算用の)国土交通相認定のプログラムの不備に原因があった。簡単に改ざんできるものを認定したのが悪い」と主張した(「自民チーム、イーホームズ社長らからヒアリング実施」朝日新聞2006年1月6日)。

「今般の耐震偽装事件の制度上の過失は、そもそも大臣認定の構造計算プログラムが結果として編集改ざんされるシステム(建築基準法では、「性能評価における業務方法書」。)において性能評価及び大臣認定されたことに過失が存在すると考えます。もし、構造計算プログラムが編集改ざん出来ないシステムで評価認定されていれば偽装事件は生じなかったのです」(イーホームズ株式会社「国土交通省、耐震偽装事件の緊急調査委員会に提出する資料」2006年1月15日5頁)。

国土交通省関連の動き

社会資本整備審議会、再発防止策をまとめる

社会資本整備審議会(国土交通相の諮問機関)の基本制度部会は、構造計算書改竄を見抜けなかった現行の建築確認制度を抜本的に見直すための再発防止策をまとめた(2006年2月22日)。一定規模以上の建物について、新たに設立する第三者機関が構造設計を再点検する「ピアチェック」の義務化を柱とする。早期に実施する防止策としては、売り主が倒産しても住宅購入者に賠償責任を果たすことができるようにした保険制度の創設と加入義務がある。罰則を強化し、危険なマンションを建設した設計者や施工業者に懲役刑を導入する(「構造計算書、第三者機関で再点検…国交省方針」読売新聞2006年2月22日)。

国土交通省、マンション政策室設置

国土交通省は、耐震性などに問題のあるマンションの建て替えと大規模修繕を総合的に進めるため、「マンション政策室」を設置する(2006年4月1日)。マンションのストックは466万戸、そのうち旧耐震基準のものは100万戸あるとされており、建て替えや大規模修繕が必要となる(「4月に「マンション政策室」を設置 国交省」住宅新報2006年3月27日)。

建築士法改正で構造設計一級建築士新設

構造計算書偽造事件の再発防止策を盛り込んだ建築士法、建築基準法、建設業法の各改正案が、11月30日午後の衆議院本会議で可決された。改正法案の内容は以下の通り。
(1)現行の建築士に定期講習を義務付ける
(2)建築士試験の受験資格を見直す
(3)「構造設計一級建築士」「設備設計一級建築士」と呼ぶ専門資格者制度を新設し、一定規模の建築物について、その専門資格者による法適合チェックを義務付ける
(4)設計の一括再委託や工事の一括下請けを全面禁止する
アトラス設計・渡辺朋幸(東急不動産物件の構造設計者)や荻島設計のような無資格者による構造設計の違法性が改めて明確に確認された。

行政への提言

公務公共サービス労働組合協議会提言

連合加盟の官公労組で組織する公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)は、東京都内で代表者会議を開催(2006年2月2日)。公共サービスの在り方を提言した。従来の行政や小泉内閣が進める「小さな政府」ではなく、狂牛病(牛海綿状脳症BSE)問題や耐震強度偽装問題等、新たに生じている不安や危険に対応できるよう仕事を改革しなければならない、とする(「政労協議でルール作りを 仕事見直しも、官公労組」共同通信2006年2月2日)。

行政の責任を考えるシンポジウム

行政の責任や銀行ローンなどについて考えるシンポジウムが、東京都内で開かれた(2006年2月18日)。耐震強度不足が判明した首都圏の分譲マンション15棟、住民約130人が参加。住民代表らは「国の十分な支援がなければ、国や金融機関を相手とした訴訟も考えざるを得ない」と口をそろえた。主催したのは、弁護士らでつくる「欠陥住宅全国ネット」など。これまで相談会などを開いてきたが、今回は過去最大規模の住民が集まった。

議論の焦点は行政責任と銀行ローンである。行政責任について吉岡和弘弁護士は講演で、「確認検査機関を指定した国にも責任があり、『公的支援』はまやかし。『賠償債務の支払い』という発想で誠意ある対応を望む」と強調した。

被害住民の負担が大きい銀行ローン問題では、中央大大学院の本田純一教授が「金融機関が融資前に物件の耐震性調査など担保鑑定を行うべきだった」と金融機関の対応を批判した。河合敏男弁護士も「このままでは自己破産する被害住民も出てくる。最後は債務不存在の確認で銀行相手に訴えるしかない」と力説した(「耐震偽装 住民シンポ 国、金融機関相手に「支援なければ訴訟」」産経新聞2006年2月19日)。

佐藤信秋前国交事務次官、橋梁業界に資金要請

今夏の参院選比例区に自民党公認で立候補予定の前国土交通事務次官、佐藤信秋氏(59)の後援会は、橋梁談合事件で起訴された26社を含む橋梁メーカー各社にパーティー券の購入を依頼した。26社中12社が購入を認めており、一部は同省OBからの働きかけがあったと証言。国交省が指名停止や違約金を請求するなど厳しく対処する一方で、前事務次官側から選挙資金の提供を求めていた形で、官が民にもたれかかる構図が改めて浮き彫りになった。

パーティーは2006年12月14日、都内のホテルで開かれ、国交省の旧建設省系OBや現役幹部、建設業界関係者ら約2000人が出席した。後援会によると、パーティー券(1枚2万円)の購入依頼を始めたのは2006年10月頃。活動の中心は後援会理事で、全国に約100人いる理事の大半を国交省OBが占める。天下り先の業界やエリアを受け持ち、パーティー券の購入や後援会への入会を勧めた。橋梁業界に対しても、橋梁メーカーに天下ったOBの理事が、約60社が加盟する業界団体・日本橋梁建設協会の企業の大部分に依頼した。

佐藤氏は橋梁談合の強制捜査着手から3カ月後の05年8月に事務次官就任。直前は技術官僚トップの技監で、談合の再発防止に向けた省内組織の委員長代理として、防止策をまとめた。

事務次官就任後も、国交省は、旧日本道路公団幹部が談合に関与したとして起訴されたのを受け、公団に改善を促すとともに、5年以内の同省退職者は営業部門に配置しないよう企業側に要請。佐藤氏の退任から2カ月後の06年9月には談合防止を目的に創設した違約金制度に基づき37社に計約44億円の違約金を請求した。

朝日新聞社が橋梁談合事件で有罪判決を受けた23社と公判中の3社(橋梁部門を分社化した1社を含む)に、パーティー券購入の有無を尋ねたところ、12社が購入したと回答。口数は2〜7口としており、金額は少なくとも70万円を超える。「購入していない」は7社で、7社が「答えられない」だった。

佐藤氏は、旧建設省出身で河川局長を務めた岩井国臣参院議員の引退に伴う後継として、06年8月に自民党の公認を受けた(「参院出馬予定の前国交事務次官、橋梁業界に資金要請」朝日新聞2007年01月5日)。

耐震強度偽装事件ニュース

ヒューザー小嶋進社長、国交省訪問

ヒューザーの小嶋進社長は2005年11月9日に国交省を訪問した。建築指導課の担当者に財政支援を迫る。小嶋社長は22日にも国交省を訪れた。制度上、支援が難しい事情を説明する担当者に対し、怒りを顕わにする場面もあったという(「国交省3度訪れ支援迫る ヒューザーの小嶋社長」共同通信2006年11月26日)。

伊藤公介元国土庁長官がヒューザー寄り発言

ヒューザーの小嶋進社長が、伊藤公介元国土庁長官の仲介で国土交通省の建築指導課長に面会する(2005年11月15日)。伊藤元長官は小嶋社長らを伴って、国交省を訪問した。課長らと面談した後、伊藤議員は小嶋社長を残して局長室に入り、山本繁太郎住宅局長と面会した。

伊藤議員は山本局長に対し、小嶋社長の主張に沿った働き掛けをした。「(偽装を見逃した)建築確認検査機関を指定した国にも責任があると思う。居住者の安全確保などが大事だと思うが、国としてどう対応するのか」。衆院予算委員会において、馬淵澄夫議員(民主)の質問に山本局長が答えた。これは伊藤元長官の記者会見での説明とは大きく食い違 う事実である。

「資金援助してくれる人と関係官庁に同行し、問い合わせの電話をかける。これを「口利き」というのではないか」(「政倫審質疑/これで幕引きにできるか」神戸新聞2006年2月25日)。

青島顕「<耐震偽造>伊藤元長官がヒューザー寄り発言 国交省認める」毎日新聞2006年2月7日
「伊藤元国土庁長官 国にも責任と発言」読売新聞夕刊2006年2月7日

偽装公表前、国交省がヒューザーに資料送信

国土交通省事務次官が16時45分から記者会見で耐震強度偽装を公表した(2005年11月17日)。国土交通省は、その30分前にヒューザー(小嶋進社長)と東日本住宅(桃野直樹社長)に発表資料をファックスで送信していた。両社は前々日に伊藤公介議員とともに国交省を訪問している。国土交通省が、国会議員が仲介した会社を特別扱いしていた事実が浮き彫りになった。

民主党の長妻昭議員は「この訪問が発表前のファックス送信という特別な計らいにつながった」と指摘する。国交省建築指導課は「2社が『公表には慎重のうえにも慎重を期してもらいたい』と言っていたので、公表にあたり送信した」と説明する。

「偽装公表前、国交省がヒューザーに資料送信」朝日新聞2006年2月23日
「報道資料、事前に渡す…伊藤元長官政倫審」読売新聞2006年2月24日

森田設計事務所・森田信秀代表死亡

株式会社森田設計事務所(東京・世田谷区)の森田信秀代表、死亡(2005年11月26日)。自殺と発表される。口封じ又は他の関係者への警告のために殺された可能性も否定できない。今の警察では警察にとってやりたくない厄介な事案は自殺とされかねない。

株式会社森田設計事務所(東京・世田谷区)は2005年12月19日、東京地方裁判所に破産手続きの開始を申請した。翌20日に開始決定を受けた。森田信秀代表の死亡により、事業継続が困難になっていたという(「所長「自殺」の森田設計事務所、倒産していた」建設総合サイトKEN-Platz 2006年1月23日)。

欠陥住宅被害全国連絡協議会、被害者相談会開催

弁護士らでつくる「欠陥住宅被害全国連絡協議会」は、東京都品川区で被害者相談会を開催した。マンションの住民約30人が出席した。弁護士側は「建築確認を行った民間検査機関や元請け設計事務所、自治体にも過失責任を問える」「売買代金が全額返ってくるほか、引っ越し費用や慰謝料も請求できる」と説明した(2005年11月26日)。

弁護士側は被害者の会を結成して集団で売り主や建設会社と交渉していくよう呼び掛けた。同協議会事務局長の吉岡和弘弁護士は「被害者が個々に補償について交渉するのと一つにまとまるのとでは発言力の重みが違う。運動の力で責任企業や行政を押していくことが重要だ」(「被害者の会の結成呼び掛け 住民相談会で弁護士」2006年11月26日)。

2005年12月

日付 出来事 典拠
12月1日 木村建設、自己破産を東京地裁に申請。2005年11月19日、熊本ファミリー銀行は木村建設が持っていた当座預金約13億円の凍結を通告した。このうち約12億円を貸付金の回収に充てた。木村建設は同21日に1回目の不渡りを出した。
12月8日

東急系でも耐震強度偽装発覚

東急電鉄系の建設会社、世紀東急工業株式会社(東京都港区、奥澤靖司社長)のマンション「アーバン武蔵小金井」で構造計算書偽装が判明した。建築主・施工ともに世紀東急工業である。設計は世紀東急工業一級建築士事務所が担当した。

1999年1月に東京都多摩東部建築事務所(当時)が建築確認し、同年12月に完成した。判明分の問題物件の中では最も古いとみられる(「東急の物件でも偽造判明 都が建築確認」共同通信2006年12月8日)。

東京都都市整備局は12月13日にアーバン武蔵小金井の偽装を発表した(東京都都市整備局「マンション建築に係わる構造計算書等の偽装について(姉歯建築設計事務所が関与したもの)」2006年12月13日)。

「新たに「姉歯マンション」判明、最も古い偽装物件」読売新聞2005年12月8日
「<耐震偽造>東京・小金井のマンションでも改ざんの疑い」毎日新聞2005年12月8日
12月11日 自民党の片山虎之助参院幹事長が午前中、テレビ朝日の番組に出演。耐震データの偽造を民間検査機関が見逃していた問題に関し、国や地方自治体が指定した民間の全検査機関を調査し、適正と判断した機関だけを再指定すべきだとの考えを示した。「民間の指定(検査)機関を、能力と意欲があるかどうかもう一度全部点検する必要がある。再指定というか、それは国民の安心につながる」。 「民間検査機関の再指定を=耐震偽装問題で片山自民党参院幹事長」時事通信2005年12月11日

ヒューザー、資産売却

ヒューザーはマンション建設用地を山口県の建設会社に売却した(2005年12月16日)。売却した建設用地はグランドステージ町田とグランドステージ和光である。売却代金は21億5千万円。このうち、20億5千万円は銀行への借入金返済に回り、住民への補償に充てられたのは約1億円のみであった(「建設中止の2用地売却」朝日新聞夕刊2006年1月16日)。

ヒューザー、国訴える方針決める

ヒューザーは、特定行政庁や国指定の確認検査機関が、姉歯秀次元建築士による偽装を見抜けなかった結果、偽装物件を販売し損害を受けたとして、国家賠償を求める訴訟を起こす方針を正式に決めた(2006年1月16日)。

関係者によると、ヒューザーは、耐震強度偽装問題が拡大した原因が、特定行政庁や検査機関の偽装の見落としにあった、との見解をまとめた。基準値以下の強度の物件に施工の許可を与えた最終的な責任は国にあるとする。

被害者住民宛文書でも「一切は確認検査機関の怠慢と国土交通省の監督責任によるもの」と主張する(「耐震偽装事件(不正文書発行事件)について」2006年1月10日)。この文書は偽装マンションの対策委員会代表が2006年1月中旬、ヒューザー本社を訪れたところ、小嶋社長から手渡された。

ヒューザー、営業活動停止

ヒューザーは営業活動を休止する。偽装問題発覚(2005年11月17日)後、新たな物件の販売が進まず、事実上営業ができなくなった。ヒューザー関係者によると、発覚前に30数人いた従業員の9割近くが退職し、現在は数人の社員が残るだけという。現在は残った数人の社員で住民との交渉などを行っている。

ヒューザーは「被害者救済に向けた指針」をまとめた。以下の方針を採る。
営業活動を停止し、会社は住民への被害補償だけを行う組織に縮小する。
会社と小嶋進社長の資産を公開し、全て被害者救済に充てる。
営業活動をただちに停止し、被害者救済のため最小限の組織に再編する。本社も東京・丸の内から2006年1月末にも移転する(「ヒューザーが本社移転へ=営業停止「補償に専念」」時事通信2006年1月17日)。
従業員には再就職先を斡旋する。
住民に連絡協議会を作ってもらい、その合意のもとで救済策を実行する。
弁護士らで専門家のチームを結成し、強度偽装事件の責任のありかを明らかにして損害賠償請求し、被害者救済に充てる(「耐震偽装のヒューザー、営業停止へ 「住民補償に専念」」朝日新聞2006年1月16日)。姉歯秀次元建築士による構造計算書偽造を見抜けなかった民間の指定確認検査機関や、制度の不備を放置したとして国にも損害賠償請求し、その補償金を原資とする。

住民側が同社の意向を受け入れるかどうか、流動的である。ヒューザーは建築主としてマンション居住者に瑕疵担保責任がある。しかし、住民集会等での説明ではヒューザーの補償方針が二転三転した。そのため、住民は不信感を募らせている。複数のマンション住民は「小嶋社長の言動は全く信用できない」として、資産保全のため破産申し立ての方針を表明した。今後の推移は不透明である。

ある法律関係者は以下のコメントをする。「破産しても、損害賠償請求は破産管財人が裁判所と相談しながら取り組む。ヒューザー自身がやるといっても、住民からみれば信用性や公平性に欠けるのではないか」(「ヒューザー営業停止へ」朝日新聞夕刊2006年1月16日)。

「国訴える方針決める ヒューザー、強度偽装で」共同通信2006年1月18日
「小嶋社長“潔白文書”」読売新聞2006年1月17日
「ヒューザー社員の大半退職 近く正式に営業停止へ」共同通信2006年1月16日
「ヒューザー営業休止へ 「居住者補償」中心に縮小」産経新聞2006年1月17日
日付 出来事 典拠
1月16日 参議院国土交通委員会は参考人質疑に強度偽装が判明したビジネスホテル「センターワン半田」(愛知県半田市)の中川三郎社長を招致することを決めた。 「ホテル社長招致」読売新聞2006年1月17日
1月17日 衆議院国土交通委員会は小嶋進ヒューザー社長の証人喚問後に理事懇談会を開催した。民主党は伊藤公介議員の証人喚問を求めたが、与党側は回答を保留した。与野党は「正当な理由がないのに証言を拒否した」として小嶋社長の再喚問や議院証言法違反での刑事告発を検討することで合意した。 「伊藤元長官の証人喚問要求」朝日新聞2006年1月18日
1月18日

伊藤公介元長官の表彰延期

衆院議院運営委員会は午後に開かれた理事会で、自民党の伊藤公介元国土庁長官の議員在職25年表彰を当面延期することを決めた。与党側が提案、民主党も了承した。表彰は1月20日召集の通常国会冒頭の本会議で行われる方向だった。野党側が伊藤氏の証人喚問か参考人招致を強く要求しているため、与党側が現段階での表彰は得策ではないと判断したとみられる。
「伊藤元長官の表彰延期 耐震強度偽装めぐり」共同通信2006年1月18日
1月18日 山形県は早ければ1月中にも、大臣指定の民間確認検査機関「日本ERI」(本社・東京都)に立ち入り検査する方針を固めた。県内の5階建て以上の分譲・賃貸マンションやホテルを対象に、構造計算書の偽造がないか調べる。積載荷重や地震力などの入力データとその計算結果を審査しているかや、計算結果を構造図面と照合しているかを点検する。国は大臣指定の各民間機関ごとに、10階建て以上の建築物を50件程度抽出し調査したが、抽出数からみて県内の物件が含まれていないと考え、独自調査をすることにした。 山根真紀「耐震計算偽造:日本ERIを立ち入り検査へ−−県、今月中にも /山形」毎日新聞2006年1月18日
1月19日 衆院国土交通委員会にて参考人質疑。平成設計の徳永豊建築士は「総研には絶対服従で、言いなりになっている意味合いを感じた」と話す。

民主党の下条みつ議員は、スペースワン建築研究所の井上正一代表に設計・監理者としての責任を質した。「工事監理の責任があるのに見過ごしたのではないか」「あなたの言っていることが通用したら誰も信用できなくなる。監理者に責任がないというのなら、誰が責任を取るのか」。

井上氏は「気が付かなかったことに関しては責任を感じる」と認めた。ただ、「現場は常に動いている。工事監理者といえども現場に常駐していない。その都度、定例打ち合わせなどで対応しているが、見切れない部分は施工者がやるべきだと考えている」と述べた(小原隆「工事監理の責任があるのに見過ごしたのではないか」建設総合サイトKEN-Platz 2006年1月20日)。

「「総研には絶対服従」=99年から姉歯氏利用−平成設計代表ら証言・衆院国交委」時事通信2006年1月19日
1月19日

参院参考人招致

参院国土交通委員会は建物構造の専門家や耐震強度が偽装されたマンションの住民らを参考人として招致した。招致されたのはグランドステージ住吉(江東区)住民の清水克利・構造偽装問題対策委員と、センターワンホテル半田(愛知県)の中川三郎社長らである。19日10時から16時まで審議し、再発防止策や国の住民支援策について意見を聴いた。

清水氏は以下のように述べた。「建築確認を信じなければ、何を信じればいいのか」「私たちを苦しめているのは、多くの違法建築物が同じ業者によって長年、建てられ続け、それを防ぐことができなかった法制度の問題だ」。

購入者側の責任を問う議員の質問には「建築確認まで疑って購入することを求められても無理だ」と反論した。「住宅喪失の危機にある自分たちを支援してほしい」と国による補償を強く求めた。

「参院国交委も参考人招致へ 耐震偽装、19日に」共同通信2006年1月13日
「耐震偽装で参考人質疑、住民訴え「生活破たんの危機」」読売新聞2006年1月19日
「<耐震偽造>マンション住民ら支援策見直し訴え 参考人質疑」毎日新聞2006年1月19日
「「住宅喪失の危機」=被害住民ら支援要望−参院国交委で参考人質疑・耐震強度偽装」時事通信2006年1月19日
1月19日 ヒューザーの会計担当者が偽造マンション住民に財務状況を説明した。説明を受けたのはグランドステージ東向島とグランドステージ藤沢の代表である。ヒューザーは偽造マンションの住民に損害を全額補償することは不可能な財務状況である。倒産した場合、住民への賠償分を除いても約10億円の債務超過に転落する見通し。 桐野耕一「<耐震偽造>「補償不能の財務」ヒューザー会計担当者説明」毎日新聞2006年1月20日
1月20日 自民党は伊藤公介・元国土庁長官から事情を聞くため、党政治倫理審査会(笹川尭会長)を開く方向で検討を始めた。 「自民、政倫審で伊藤元国土庁長官の事情聴取を検討」読売新聞2006年1月21日
1月21日 自民党の片山虎之助参院幹事長は朝、TBSの番組に出演した。野党が自民党の伊藤公介元国土庁長官の証人喚問を要求していることに関し、衆院国土交通委員会での喚問を検討する必要があるとの考えを明らかにした。「委員会の理事が相談するだろうが、場合によってはやるべきだ。本人の説明が足りないところは党が補わないといけない。党の政治倫理審査会でも話を聞くことになっている」。 「伊藤元長官の喚問必要=自民参院幹事長が言及」時事通信2006年1月21日
「伊藤氏の証人喚問も検討 耐震強度偽装で片山氏」共同通信2006年1月21日
1月21日 ヒューザー(東京都)の破産申し立てについて、首都圏のマンション八棟が参加を決めた。同社の資産散逸を未然に防ぐのが目的で、資産は建て替え費などに充てる。2006年1月末を目処に東京地裁に破産を申し立てる予定。

参加棟数はヒューザーが販売(完成済み)した偽装マンション約17棟のほぼ半数にあたるが、対応を決めていないマンションもあり、今後、参加棟数が増える可能性もある。破産申し立てを決めたのは、同社の「グランドステージ」シリーズの住吉、茅場町、稲城、赤羽、千歳烏山、江川、下総中山とコンアルマーディオ横浜鶴見の計8棟。

「ヒューザー破産申し立て 8棟月末にも」産経新聞2006年1月22日
1月21日 グランドステージ東向島管理組合はヒューザーの破産申し立てへの参加を棄権した。住民の間には「破産管財人が入った方が配分が公平になる」「破産させずに残し、きちんと真相を解明させるべきだ」との両論があり、全世帯での投票結果も賛否同数で、意見がまとまらなかった。 「8カ所が破産申し立てに賛成 ヒューザーに対し住民ら」共同通信2006年1月21日
1月22日 公明党の井上義久政調会長はテレビ朝日の番組に出演。自民党の伊藤公介元国土庁長官の証人喚問を求めていることについて、国会招致が必要との考えを明らかにした。「国会に出てきて、説明責任を果たしたらいい」。 「伊藤氏の国会招致必要=堀江氏支援「自民は反省を」−井上公明政調会長」時事通信2006年1月22日
1月22日 ヒューザーの小嶋進社長、グランドステージ溝の口(川崎市高津区、24戸)の住民説明会に出席。住民側からは批判の声が上がった。「自分達が第一被害者というのは、被害者の心情を理解しない発言」「すべてが『たら、れば』で、実現性が感じられない。現実を把握できているのか」「言っていることは口先だけ。逃げ道を作っている」。 広瀬登「安全ショック:構造計算書偽造 「口先だけ」住民冷ややか−−住民説明会/神奈川」毎日新聞2006年1月23日
1月23日 毎日新聞が1月21、22日の両日実施した世論調査の結果を発表。支持政党で自民党を挙げた人は28%で、2005年11月の前回調査より7ポイントも減少した。先の衆院選でライブドアの堀江貴文社長を自民党が実質支援したことや、耐震データ偽造問題で同党議員の関係が追及されていることが影響した、との見方が与野党から出ている。

構造計算書改竄を見抜けなかった民間確認検査機関や自治体の責任の方が国より重いと考えている人は約六割である。自宅の耐震強度に不安を感じている人は三割を超えた。

「<自民支持率>7ポイントも減少28%に 毎日新聞調査」毎日新聞2006年1月23日
「<耐震偽造>民間検査機関や自治体の責任6割近く 世論調査」毎日新聞2006年1月23日
1月25日 小泉首相は参院本会議で、民主党が自民党の伊藤公介元国土庁長官の証人喚問を求めていることについて、伊藤氏自身が説明責任を果たすべきだとの考えを示した。「政治家たるもの、自らの政治活動については国民に自ら明らかにしていくことが大切だ」。 「強度偽装、伊藤元長官は「自らの活動明らかに」…首相」読売新聞2006年1月25日
1月25日 川崎市の阿部孝夫市長は市が建築確認しながらも、姉歯秀次元建築士によるデータ偽造があった市内のマンション4棟について、建築主の責任による補強工事を求めることを明らかにした。「市には問題を起こした事業者に徹底的に被害者救済をさせる責任がある」。「補強工事は業者負担。市が補助する考えはない」。 「安全ショック:構造計算書偽造 川崎市長「マンション補強工事は業者負担」/神奈川」毎日新聞2006年1月26日
1月26日 警視庁などの合同捜査本部は姉歯秀次元一級建築士らの建築基準法違反容疑などを裏付けるため実施する現場検証の際、原則として全て破壊検査を行うことを決めた。偽装物件の強度を確認する現場検証は、建築基準法だけでなく詐欺容疑での立件を目指す際もポイントとなる。そのため、合同捜査本部は、鉄筋量だけでなくコンクリートの強度も正確に分析することが可能な破壊検査を重視した。 「全検証物件で破壊検査 耐震強度を正確に分析」共同通信2006年1月26日
1月29日 民主党の鳩山由紀夫幹事長がNHKの番組に出演。小嶋進ヒューザー社長と安倍晋三官房長官の秘書との関係について何らかの関与があったとの見方を示した。「(安倍氏は)国土交通省側に働き掛けはしていないと言っているが、国交省側のいろんな方から聞くと、どうもそうでもない」。秘書の関与の疑いは依然ぬぐえないとの認識を示した(「安倍氏秘書「働き掛け」疑念消えぬ=民主・鳩山氏が指摘」時事通信2006年1月29日)。 「鳩山氏 自民議員の関与改めて指摘」スポニチ2006年1月29日
「国交省への関与を指摘 安倍氏秘書問題で鳩山氏」共同通信2006年1月29日
1月30日 ヒューザーは、耐震計算書偽造を見抜けなかったとして、東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県にある17市区と都を相手取り、総額139億円の国家賠償訴訟を東京地裁に起こした。耐震強度偽装事件で行政を相手取った提訴は初めて。 「ヒューザーが賠償求め提訴=18自治体に139億円請求−耐震強度偽装・東京地裁」時事通信2006年1月30日
1月30日

グランドステージ東陽町で偽装発覚

グランドステージ東陽町(江東区千石3-4-2)の耐震強度偽装物件が判明した。97件目の偽造物件と認定された。耐震強度は基準の61%である。グランドステージ東陽町はヒューザーが建築主で、下河辺建築設計事務所が設計、木村建設が施工した。日本ERIが2002年1月に建築確認し、2003年2月に竣工した。

江東区は当初偽装ではなく設計ミスと報告した。しかし、再調査したところ偽装と判明した。構造計算書には偽造は見つからなかったが、計算書に基づいて作られる構造図に計算書と一致しない点があった。構造図からの再計算で耐震強度の不足が判明した。震度6弱の地震で倒壊の恐れがある。

行政からマンション名が正式に発表されたのは2月7日である。江東区の担当者は「国から『物件を明らかにしないと通行人にも危険だ』と公表の要請があった」と話す(「<耐震偽造>川崎の2棟強度不足 40日以上も公表せず」毎日新聞2006年2月15日)。

グランドステージ東陽町はRC造、地上8階、29戸である。基礎工事は株式会社ジオトップ(大阪市中央区)が担当し、TAIP工法を採用した。杭明細(杭種・杭長・本数)は以下の通りである。
鋼管杭 φ700 L46.5m 11本
鋼管杭 φ800 L46.5〜56.5m 19本
鋼管杭 φ900 L56.5m 5本
鋼管杭 φ1000 L46.5〜56.5m 11本

「新たに偽装確認、計97件に 江東区の分譲マンション」共同通信2006年1月30日
「<耐震偽造>姉歯氏物件が97件に 東京・江東区」毎日新聞2006年1月30日
「東京・江東の「姉歯物件」、耐震強度61%」日本経済新聞2006年2月7日
1月30日 国土交通省は、建築確認の際に姉歯秀次元一級建築士による偽装を見逃した二十八自治体を対象に行った聞き取り調査の結果、四市区の構造審査方法に「重大な問題点があった」ことを明らかにした。社会資本整備審議会建築分科会の基本制度部会で報告した。

問題があったのは福岡市、前橋市、長野県松本市、東京都中央区。コンピューター処理する構造計算書は、耐震強度が建築基準法の水準を下回るとエラーメッセージが記載される仕組みだが、四市区ともエラーメッセージがまとめて出るページが欠落していたのに建築確認を行っていた。

国交省が今月、二十八自治体が建築確認をした十階建て以上の物件から各十件を抽出して調査し判明した。福岡市でマンション六件、前橋市は二件、松本市と中央区はそれぞれ一件で不備が見つかった。また、自治体自ら実施した建築確認業務の点検の結果、建築主など基本データを記載した台帳で、福岡市で修正後の数値の記入漏れが見つかるなど、計七市区で誤記入や記入漏れがあったことも分かった。

「構造審査「重大な問題」 福岡など4市区 エラー表示されず」西日本新聞2006年1月31日
1月31日 ヒューザーが販売した耐震強度偽装マンションの購入者が、ヒューザーは実質的に債務超過の状態にあるとして、同社の破産を東京地裁に申し立てた。申し立てたのはグランドステージ住吉(東京都江東区)、グランドステージ下総中山(千葉県市川市)など千葉、東京、神奈川の三都県にある強度が偽装されたマンション9カ所の住民計309世帯である。

グランドステージ住吉の清水克利・対策委員ら住民代表は午後、東京都庁で記者会見した。 「ヒューザーの資産流出は明らかだ。補償(のための資産)をどう減らさないかを考えれば、破産申し立て以外に方法はない」。「破産させて資産状況の透明化を図るべきだ」「会社が存続しても補償も期待できず資産が減るだけ」「補償を得るためにやむを得ない」「ヒューザーの資産は減る一方で増える要素はなく、貸す銀行もおそらくない。だらだらと残すよりも清算すべきだ」。

「ヒューザーの破産申し立て」産経新聞2006年1月31日
「「破産以外に方法ない」偽装マンション住民が会見」共同通信2006年1月31日
「<耐震偽造>破産申し立て 被害住民「補償得るため必要」」毎日新聞2006年2月1日

新生銀行、支援策発表

新生銀行は、新生銀の住宅ローンを借りて偽装マンションを購入した住民への支援策を発表した(2006年22月1日)。返済を最長三年間猶予でき、その間の金利を免除する。返済猶予期間の金利が一切免除されるため、猶予によって返済総額が増えることはない。具体的な特例措置を公表した民間金融機関は初めて(「耐震偽装 新生銀、ローン最長3年猶予 住民支援へ金利免除」産経新聞2002年2月2日)。

全国銀行協会は、耐震偽装マンションを購入した住民の住宅ローンの返済支援策を発表した(2006年2月6日)。対象は震度5強程度の地震で倒壊する恐れがあり、解体の対象となっている10棟288戸。支援策は元金・利息の返済を最大3年間猶予、返済期間を最大3年間延長、返済猶予期間の金利は可能な限り引き下げる、返済方法の変更のための事務手数料を免除の4項目である。マンション再建後の新規ローンについても柔軟な対応を示す。

合同捜査本部、事情聴取開始

合同捜査本部は、マンション建築主ヒューザーや施工業者木村建設の元従業員らに対する任意の事情聴取を本格的に開始した(2006年2月2日)。偽装マンションやホテルの建築主、施工業者、元請け設計会社などからも幅広く聴取する方針で、対象は100人を大きく超える見通し(「ヒューザー、木村の聴取本格化=対象100人超に−合同捜査本部」時事通信2006年2月2日)。

日付 出来事 典拠
2月3日 国会議員が国会質問のため、姉歯秀次元建築士を聴聞した記録の開示を求めたのに対し、国土交通省は「個人情報にあたる」として拒否した。2005年4月に全面施行された行政機関個人情報保護法の規定を理由とする。しかし情報公開法は生命や財産などの保護のため必要なら、個人情報も開示できると定める。同省は、国会での真相究明より姉歯元建築士の情報保護を優先した形で、論議を呼びそうだ。 「「姉歯聴聞」国交省が開示拒否…「個人情報」理由に」読売新聞2006年2月3日
2月4日 グランドステージ池上(東京都大田区)の耐震強度が、建築基準法の最低基準の50%を割り込んでいることが、大田区の調べで分かった。グランドステージ池上は姉歯秀次元一級建築士が「最初に偽装した」と証言した物件である。

グランドステージ池上は大田区が建築確認し、1999年6月に完成した。偽装問題が2005年11月に発覚した後、建築主のヒューザーは「強度不足」を住民に伝えた。しかし同社か住民側が保管している筈の建築確認申請書類副本が紛失していたことから、区は当初「偽装は確認されていない」としていた。

住民からの要望を受け、大田区は2006年1月から、超音波装置を使った調査の他、柱や梁に実際に穴を開け、内部の鉄筋量を調べる破壊検査をした。その結果、ヒューザーに残っていた施工図を基に同社が作成した構造計算書による耐力不足と、ほぼ一致したことが分かった。

「「最初の偽装マンション」耐震強度50%以下 退去勧告へ」産経新聞2006年2月4日
2月4日 国土交通省は姉歯秀次元建築士の構造計算書の偽造を見逃し建築確認を出したイーホームズなど6つの民間の指定確認検査機関と審査を担当した確認検査員について、建築基準法に基づき年度内に処分する方針を固めた。 「検査機関は年度内に処分 耐震強度偽装で国交省方針」2006年2月4日
2月5日 グランドステージ川崎大師(川崎市川崎区)の住民と施工業者の太平工業が協議。同社は竣工図通りに施工されなかった部分について補償する考えを示した。一方で同社は「耐震強度にはほとんど影響がない」と主張。住民から「自己弁護だ」と憤りの声が上がった。 「<耐震偽造>業者が竣工図通りに補償へ 川崎のマンション」毎日新聞2006年2月5日
2月6日 政府は閣議で決定した答弁書で、国土交通省のOB18人が民間の指定確認検査機関6社に再就職していることを明らかにした。長妻昭衆院議員(民主)の質問主意書に答えた。

「民間検査機関に天下り18人=国土交通省OB、6社に−耐震強度偽装」時事通信2006年2月6日
2月6日 日本ERIは、グランドステージ川口(川口市原町、11階建て)の実態調査を始めた。同社が実態調査を行うのは初めて。調査は約1週間。ベランダや階段の壁に穴を開け、モルタルを抜き取って成分や強度を調査し、レーザーで柱や梁の中の鉄筋の本数を確認する。調査結果をもとに同社が構造計算を再計算し、マンション住民らに補強策などを示す。同社が行った構造計算書の再検査では、耐震強度は基準値の56%だった。

耐震データが偽造された川口市原町のマンション「グランドステージ川口」(11階建て、21世帯)の耐震強度実態調査が、終了した(2006年2月11日)。調査した佐藤啓智・県建築士事務所協会川口支部長は、33カ所で実施したコンクリート強度調査について、「各階ベランダの耐震壁の厚さが設計図の18センチに満たない15センチだった」と明らかにした。

同日開かれた住民総会で結果が報告され、住民からは「今後補強案が提示されることになっているが、その先が見えない」など不安の声が出たという(森国郎「耐震計算偽造:耐震壁の厚さ、設計図に満たず−−川口のマンション /埼玉」毎日新聞2006年2月12日)。

「川口のマンション強度偽装、日本ERIが初の実態調査」読売新聞2006年2月6日
2月8日

非姉歯物件で偽装発覚

姉歯秀次元建築士以外の建築士が構造計算し、木村建設が関与した福岡市内のマンション3件について、同市が偽装を確認した。国交省は都府県を通じ、木村建設が施工などに関与した物件の実態調査を進めていたが、姉歯元建築士以外の建築士による構造計算書が偽造と確認されたのは初めて。3件の構造計算をしたのは廃業した福岡県春日市の設計会社「サムシング」(仲盛昭二代表)である。偽装された3物件は構造計算に一部修正が加えられ、一貫性がない。サムシングが手掛けた物件は約二十年間でおよそ一万二千件に上るとされるだけに、行政による徹底調査を求める声が相次いでいる。

国土交通省は仲盛昭二一級建築士から建築士法に基づき事情聴取する方針を固めた。早ければ今週中にも、九州地方整備局に出頭を求める。聴取を通じ、これまでにサムシングが構造計算に関与した物件の特定や偽装の有無、多い時には約50人が所属していたとされる建築士が偽装にどのようにかかわったのかを調べる方針。しかし、同社の廃業に伴い関係書類は散逸しているとみられ、偽装の全容把握は困難な見通しである(「国交省も建築士聴取へ サムシングの耐震偽装問題」共同通信2006年2月8日)。

「偽装を意図せず作成した構造計算書が欠陥住宅を生んでいるとすれば、問題の根深さは姉歯疑惑の比ではなくなってくる」(「“姉歯以外”が示す新たな欠陥住宅問題」日経ビジネス2006年02月20日号8頁)。

「非姉歯で初の偽装確認 福岡市マンション3件」共同通信2006年2月8日
「設計関与1万2000件 九州で最大手級 サムシング社偽装」西日本新聞2006年2月9日
2月8日

熊本県、偽装物件を放置

熊本県内の木村建設施工のマンションやホテル6件に耐震強度不足があることが判明した。熊本県の依頼で、日本建築構造技術者協会九州支部JSCAが木村建設が県内で関与した建築物について構造計算のやり直しを行ったところ、耐震強度不足が判明した。何れも姉歯秀次元建築士や設計会社サムシングは関与していない物件である。

熊本県は強度不足2件の具体的な数値(1件は耐震基準の67%)を1月13日に把握しながら、数値の確認や国への報告などの対応をせず事実上放置していた。半月以上も国に報告せず対策も取らなかった(「<耐震偽造>熊本県土木部次長が対応の遅れ陳謝」毎日新聞2006年2月9日)。国土交通省の調査で判明した(「数値把握後も放置 熊本県、耐震基準の67%」共同通信2006年2月10日)。「厄介な物件が判明してしまった」という態度がありありである。

国土交通省は、熊本県の西山一郎土木部次長を呼び、公表が遅れた経緯について説明を求めた(2006年2月9日)。西山次長は「忙しかった」などと答えた。同省の小川富由建築指導課長は「国民の不信を招く行為で誠に遺憾だ」と述べ、行政の対応を検証するよう求めた(「「国民の不信招く行為」=「強度不足」公表遅れ−熊本県に検証要請・国土交通省」時事通信2006年2月9日)。北側国交相は10日、「遺憾だ。そのまま報告してもらわないといけない」と県の対応を批判した(「<耐震偽造>熊本県の報告遅れに「遺憾」 国土交通相」毎日新聞2006年2月10日)。

「6件で耐震強度不足指摘 震度5強で倒壊の恐れ」共同通信2006年2月8日
「<耐震偽造>熊本県のマンション、ホテルの6件に強度不足」毎日新聞2006年2月8日
2月9日 設計会社「サムシング」(仲盛昭二社長)は、姉歯秀次元建築士と同様に、二つの構造計算書を組み合わせる手口で改竄を行っていた疑いが強いことが、福岡市などの調査でわかった。同社は建物の重量を実際より軽く見積もり、「OK」を出した計算書の結果部分だけを、元の計算書と組み合わせ、市などに提出していたと見られている。 「福岡のマンション強度偽装、2種類の構造計算書用意」読売新聞2006年2月10日
2月9日 東京都は姉歯元建築士が構造計算を偽装したマンションなどの設計を担当した元請け設計業者六社に、建築士法に基づき2006年2月9日付で設計事務所の登録を取り消す処分を行った。登録を取り消されたのは、スペースワン、下河辺建築設計事務所、エスエスエー建築都市設計事務所、平成設計、木村建設東京支店、シノケン東京支店。

六社は、姉歯元建築士の偽装を見逃し、建築基準法に違反して強度不足の建築物を建てた疑い。エスエスエー建築都市設計事務所など四社は既に廃業届を都に提出していたが、都は登録抹消とせず、「登録取り消しとするのが妥当」と判断した。

「<耐震偽造>東京都、元請け設計会社6社の登録取り消し」毎日新聞2006年2月9日
「元請け設計業者6社、事務所登録取り消し 都が処分」産経新聞2006年2月10日
2月11日 姉歯秀次元建築士が、「最初の偽装物件」と証言した東京都大田区の分譲マンション「グランドステージ池上」(24戸)について、同区が「破壊検査」などを行った結果、耐震強度が基準の50%にも満たないことがわかった。区は11日、居住者に説明し、区が行った建築確認や完了検査で不正を見抜けなかったことを陳謝する。

同マンションを巡っては、建築主のヒューザー(大田区)は最も弱い部分で強度が44%と公表した。しかし同区はこれまで構造計算書など正規の資料が残っていないため、「偽装は確認できていない」としてきた。区はエックス線などによる非破壊検査に加え、壁や柱の一部をドリルで削る破壊検査も行って強度を調べた。

「GS池上の耐震強度は50%未満、検査の大田区謝罪へ」読売新聞2006年2月11日
2月15日 耐震強度が基準値を下回ることが判明した川崎市内のマンション2棟について、川崎市は偽造確認後40日以上経過した現在も、物件名や耐震強度の数値を国に報告していない。同市は「入居者の了解が得られないため」と言うばかりだが、周辺住民にとって大事な安全対策上の情報であり、他の自治体から「行政の怠慢ではないか」と批判の声も上がる。国土交通省も「地震はいつ起きるかわからず、近隣住民の安全性を考え、速やかに報告するようお願いしている」と話す。

耐震強度偽装事件で著しい強度不足の分譲マンションを抱える自治体と国土交通省は、公的支援で支出される家賃補助や建て替え費用の返還請求を、各自治体がヒューザーに対し、速やかに行うことで合意した。国の2005年度補正予算で総額50億円が計上されており、今月中に法的手続きに入る自治体もあるという。自治体の動きに対し、グランドステージ住吉の八住庸平・対策委員長は不快感を示す。「住民が得られる補償額を削られるのは納得できない」。

「<耐震偽造>川崎の2棟強度不足 40日以上も公表せず」毎日新聞2006年2月15日
2月16日

ヒューザー破産手続き開始

東京地裁(西謙二裁判長)は、マンション住民による販売主ヒューザーの破産申し立てについて、破産手続きの開始を決定した。地裁は同社が債務超過状態にあると認定した。破産管財人には瀬戸英雄弁護士を選任。財産状況報告集会は9月13日に開かれ、債権届け出期間は6月30日まで。決定によりヒューザーの財産を管理・処分する権限は破産管財人に属する。届けられた債権が適正かどうかを調べ、住民ら債権者に財産を公平に配当する。

住民側によると、負債は瑕疵担保責任に基づく損害賠償債務などで、住民への債務は少なくとも130億円以上という。債権者として破産を申し立てたグランドステージ稲城(東京都稲城市)の住民代表・赤司俊一氏らが東京都庁で記者会見。破産債権として届ける額について「少なくとも購入価格の全額を考えている」と表明した。

ヒューザーに対する破産手続きの開始を受け、破産を申し立てた分譲マンション9棟の住民代表と弁護士が記者会見した。住民らは「主張が認められたうえ、資産流出を防ぐという趣旨も酌んでもらえた早い決定で、うれしい」と心境を語った。

ヒューザー、即時抗告

ヒューザーは17日、決定を不服として東京高裁に即時抗告した。ヒューザーの代理人弁護士によると、これに対し同社は「自治体を相手取った損害賠償請求訴訟で勝訴する見込みがあるから、債務超過に当たらない」と主張するという。

ヒューザー資産の目減り

破産管財人に選任された瀬戸英雄弁護士は17日午前、東京都内で記者会見した。現時点ですぐに配当などに充てられるヒューザーの資産は現金約540万円、銀行預金約2300万円にとどまることを明らかにした。

瀬戸弁護士はヒューザーの小嶋進社長と16日夜会ったことを明らかにした。瀬戸弁護士はその際、会社名義の預金通帳に約2300万円の残高があったことを確認。ヒューザー側から現金540万円を受け取った。

瀬戸弁護士は、ヒューザーの2005年9月末の中間決算に関する書類と、2006年1月末の財産目録を比べ「相当目減りしているのは事実だ」と話し、目減り分が被害の弁償に当てられたのかどうかを今後、調べる考えを示した。

「ヒューザー破産手続き開始 申し立て認める」共同通信2006年2月16日
「<耐震偽造>ヒューザー破産手続き開始 住民ら「うれしい」」毎日新聞2006年2月17日
「破産手続き開始決定に不服、ヒューザーが即時抗告」読売新聞2006年2月17日
「すぐ配当できるヒューザー資産、約2840万円」読売新聞2006年2月17日
「小嶋社長と会い、現金受領 ヒューザー管財人が会見」共同通信2006年2月17日
2月16日

自動車道橋脚で偽装

国土交通省などが発注した自動車専用道路「能越(のうえつ)自動車道路」(富山県砺波市―石川県輪島市)の建設工事で、高架道路の橋脚を支える基礎杭が設計基準より最大10%細いにもかかわらず、工事業者が橋脚2基の杭に偽装を施し、基準通りの太さに見せかけて国交省の検査をパスしていたことが、わかった。建築物の耐震強度偽装が深刻な社会問題となっているが、土木の世界も他人事ではない。

業者は、読売新聞の取材に偽装を認めている。さらに別の1基でも偽装が行われた疑いがあり、国交省北陸地方整備局が調査している。マンションなどの耐震強度偽装やホテルの不正改造に続き、国の検査制度を軽視した不正がまた明るみに出た。

工事を担当したのは、富山県内の中堅建設会社「松本建設」(本社・砺波市、松本誠一社長)。同社は、富山県氷見市に建設中の高岡北IC(インターチェンジ)―氷見IC(仮称)間の自動車道のうち、4基の橋脚を作る「粟原(あわら)高架橋下部工事」を受注。2004年1月に着工し、工期は当初、5か月間の予定だった。

同社などによると、2004年8月、橋脚の土台に打ち込んだ基礎杭のうち、不良工事のため、検査の対象部分となる杭の上部が設計基準の「直径1200ミリ」を満たさないものが見つかった。地下数十メートルまで埋められる杭について、国交省は、出来上がりを確かめる「段階確認」の際、土中から数十センチ突き出た「杭頭(くいとう)」の直径を測って太さをチェックする。

同社は、杭頭の外側に型枠を設置してコンクリートを流しこみ、杭頭の直径だけを太くしていた。関係者によると、4基の橋脚のうち少なくとも2基で偽装が行われた。1基は、計8本の杭のほとんどが基準以下で、うち4本が12センチ細かったという。国交省は2004年8、9月、段階確認を行ったが、この偽装を見抜けず、2005年3月、工事代金約1億8000万円を松本建設に支払った。

「自動車道橋脚で偽装、富山能越道の杭の太さ基準以下」読売新聞2006年2月17日
2月17日

ヒューザー、宅建業法違反で免許取り消しへ

東京都は、耐震強度の偽装の疑いを知りながらマンションを引き渡したとして、宅地建物取引業法違反での免許取り消し処分に向け、ヒューザー等二社に対する聴聞を都庁で行った。

ヒューザー側は偽装の認識はなかったとする陳述書を提出し、聴聞は欠席した。都は、欠席のまま聴聞手続きを終えた。重要事項の説明を義務付けた宅地建物取引業法47条に違反すると認定した。近く免許を取り消す。刑事告発の手続きを進める方針である。

「ヒューザーの免許取り消しへ=宅建業法違反で−東京都」時事通信2006年2月17日
「ヒューザー刑事告発へ 宅建業免許も取り消し」共同通信2006年2月17日
2月19日 耐震強度偽装の再発防止策のため国土交通省がまとめた中間報告の最終案が明らかになった。建築士の業務倫理を徹底するため「倫理教育の充実を検討する」ことが新しく盛り込まれた。

自治体などに出す建築確認の書類に、実際には設計に関係ない1級建築士の名前を載せる名義貸しなどの不正行為について、建築士法で新たに罰則を設けることも打ち出した。

「建築士の業務倫理を徹底 耐震偽装防止で国交省」共同通信2006年2月19日
2月21日 衆院政治倫理審査会(瓦力会長)は幹事会で、マンションなどの耐震強度偽装事件に絡んで自民党の伊藤公介元国土庁長官から申し出があった弁明聴取を23日午後に行うことを決めた。審査会は非公開が原則だが、今回は国会議員とテレビ、新聞には公開する。テレビ中継するかどうかは引き続き協議する。 「伊藤元長官の弁明聴取は23日、マスコミにも公開」読売新聞2006年2月21日

衆院予算委員会(2006年2月21日)

衆院予算委員会は、耐震データ偽造事件に関する集中審議を行った。伊藤公介元国土庁長官がヒューザーの小嶋進社長を国土交通の担当者に引き合わせていた問題で、当時伊藤氏と面会した国交省の山本繁太郎住宅局長は働きかけを改めて認めた。「伊藤氏は『建築確認検査機関を指定した国にも責任がある』と話した」と述べる。

山本住宅局長は、政府が公的支援策を決定した2005年12月6日にマンション開発会社ヒューザーの役員からヒアリングするまで、同社の財務諸表を確認していなかったことを明らかにした。原口一博氏(民主)への答弁である。

原口一博議員は事件に対する独自の分析を披露した。建築サイクルが短い日本と違い、建築物が長く資産として残る欧州の建築文化を引き合いに出して、「建築物を、個人の所有物とするのでなく、社会的資産、環境資産として捉える必要がある」と指摘した。さらに、設計、施工業者が一体で建物を建てる構図によって、「資本の弱いところにしわ寄せが来ている」との見方を示し、「構造的に偽装は行われた」と結論付けた。

「<耐震偽造>住宅局長、伊藤氏の具体的働きかけ改めて認める」毎日新聞2006年2月21日
「ヒューザーの財務諸表見ず支援決定=国交省局長が答弁−「耐震偽装」集中審議」時事通信2006年2月21日
「耐震偽装は「構造的な問題」」ライブドア・ニュース2006年2月21日

大田区に批判続出

国土交通相の諮問機関「緊急調査委員会」(座長・巽和夫京都大名誉教授)が、大田区にある分譲マンション「グランドステージ池上」で初の現地調査を実施した(2006年2月21日)。調査委と住民との意見交換では、住民から「区長は無責任。住民の苦しみを分かろうともしていない」と大田区への批判が相次いだ。

住民の現状を把握するため実施された意見交換には、巽座長ら委員7人と、住民側から管理組合理事長と主婦4人が出席。理事長は委員を前に、「大田区は建物の耐震強度は足りないが、偽造があったかは不明との態度をとり(建築確認した)責任も当事者意識も感じていない。そのストレスで日々もんもんとしている」と心情を訴えた。

また、主婦の一人は「区から転居のため紹介された物件も既にいっぱいで、区は賃貸を借りる際に礼金や敷金を免除するよう依頼するといっていたのに、『住民が個別で対応して下さい』と発言を変えた」と憤る。「この事件の心労で夫は入院し、私も通院している。区が偽造を見逃さなければ、こんな悲劇は起きなかった」と語った。

さらに別の主婦は「子供が夜起きて、『マンション倒れちゃうの』と泣いて怖がる。どれほど怖いか、区長も泊まってほしい」と怒りを込めた。

NPO法人全国マンション管理組合連合会会長の穐山精吾委員は以下のように語る。「みなさんの発言は、まさに我々が前々から言っていたことが凝縮して起きたこと。この意見交換で把握した実情を、大臣に申し上げたい」(桐野耕一「耐震計算偽造:現地調査、大田区に批判続出 緊急調査委に住民訴え /東京」毎日新聞2006年2月22日)。

構造計算書非提示に対し、マンション購入者が提訴

2005年3月の福岡県西方沖地震で被災したマンションの構造計算書等の提出に応じなかったのは不当として、部屋を所有する山口県萩市の食品販売会社社長が、販売した不動産会社「大京」を相手取り、山口地裁萩支部に提訴した(2006年2月22日)。売買代金(約8000万円)の返還や慰謝料など計約9000万円の支払いを求める。

訴状によると、社長は1990年3月、福岡市の14階建てマンションの1室を購入、同地震で1階の柱部分や外壁のコンクリートがひび割れるなどした。大京側は2005年5月、住民らへの説明会で、施工時に建物の基礎部分に手抜き工事があったと説明した、とする。

社長は具体的な欠陥内容の説明と、安全性を判断する構造計算書などの資料を求めたが、回答がなかった。このため、2006年1月、売買契約の解除を求める文書を郵送。これに対し、同社は「解除には理由がない」と回答したという。

大京広報部は「(説明会では)手抜き工事という説明はしておらず、一部に施工不良があったことや、補修工事の内容などについて説明した。入手可能な書類は写しを送付している」とする(「「構造計算書の非提示は不当」マンション所有者が提訴」読売新聞2006年2月22日)。

耐震強度偽装物件は氷山の一角

一連の欠陥建築物の問題は氷山の一角に過ぎない。明らかになっていないだけで他にも偽装物件は存在する。震度五強の地震で倒壊する恐れのあるマンション、ホテル等の建物が日本中に建てられている。同じような形で同じような工法で建てられた建物は全国に散らばっている。建築費をカットするために行われたいわゆる手抜き工事のマンションやビルは数千棟はあるだろう。

問題のある建物が続々と明るみに出ている。問題発覚の遅れが被害を拡大させた。偽造物件は姉歯建築設計事務所が認めただけでも首都圏のマンションやホテル21棟ある(グランドステージ川崎大師(川崎市川崎区中瀬3)、グランドステージ北千住、湊町中央ビル、京王プレッソイン茅場町)。その後、100件近くまで増加した。

姉歯建築士が偽造を認めていなかった物件でも偽造が判明している。姉歯建築設計事務所は過去10年間に22都府県で計194件の構造設計にかかわっていた(千葉県調査)。その後、姉歯秀次建築士がかかわった建築物は、計201件に増加した(「「姉歯物件」201件に拡大=偽装36件、近く耐震性確認−国交省」時事通信2005年11月28日)。

「行政官庁が耐力に問題ないとの結果を出しながら、実際には耐力不足のマンションが他にも水面下でかなりあるのではないかと疑っている」(山岡俊介「本当に単純ミスなのか? 不可解な横浜市の構造耐力不足マンション見落とし」ストレイ・ドッグ2006年3月20日)。

偽装物件の危険性

偽造物件は耐震基準を満たしておらず、震度五の地震で倒壊する可能性が高い。建築基準法では、震度五強程度で損傷せず、震度六強以上で倒壊しない耐震強度を最低基準として定めている。しかし、偽装物件の耐震性能は基準の三−七割しかない。

偽造物件は巨大地震が来れば倒壊する。「阪神・淡路大震災に重ねれば、ことごとくつぶれていておかしくない」(「正平調」神戸新聞2005年11月22日)。日本は古来より、幾たびもの震災に見舞われてきた。活断層が縦横に走る地震大国であるが故、いつどこで大地震が起きてもおかしくはない。最近でも震度四の地震は起きている。この先、近い将来に震度五を越える地震が起こる可能性は否定できない。

五年後には、何も起きていなくても柱や梁が折れ曲がる恐れがある(「強度偽装マンション、2棟は自壊の恐れも」読売新聞2005年11月20日)。専門家は「上の階が落ちる可能性がある」と指摘する(「暗転「上の階が落ちる」」読売新聞2005年11月29日)。

財産どころか生命まで危険に晒す建物である。まさに殺人マンションである。現実に倒壊する前に発覚したのがせめてもの救いと言える。建物は破壊しなければならず、他の用途にも使用不可能である。専門家は「補強の入れようがないし、建て替えも容易じゃない」と語る(「<耐震偽造>専門家「取り壊すしかない」」毎日新聞2005年11月22日)。

六千四百人を超える阪神・淡路大震災の犠牲者の死因は、警察の検視などを経た「直接死」の七割以上が住宅倒壊などによる窒息・圧死が占める(「耐震診断 地域で格差 補助必須」神戸新聞2006年1月5日)。

イーホームズ確認マンションで新たに偽装発覚

姉歯秀次・元一級建築士が関与した物件について国土交通省が行った全国調査で、自治体から当初「偽造なし」と報告された物件が、再調査で「偽造あり」と訂正されるケースが相次いでいる(長谷川豊「[耐震偽造]自治体再調査、一転「偽造あり」次々」毎日新聞2005年12月8日)。自治体が設計数値を確認せず書類様式をみただけで、異常なく安心と発表したことが明らかとなった。仕事をしない役人がのさばったり業者に天下りしたりして甘い汁を吸い続けるのを根絶しなければならない。

姉歯建築設計事務所による耐震データ偽造問題で、横浜市保土ケ谷区のマンション「レジーナ和田町エスタシオン」(六階建て)の構造計算書に偽造された部分があることが判明した(2005年12月5日)。横浜市が、千葉県が通告した姉歯建築士が関与した建物を調査して発覚した。マンションの元請け設計は井上建築企画研究所(東京都渋谷区)で、イーホームズ(東京都新宿区)が確認検査業務を担当した(内橋寿明「<耐震偽造>新たに発覚 横浜・保土ケ谷区のマンションで」毎日新聞2005年12月5日)。

耐震強度偽装問題で、東京都練馬区は姉歯建築設計事務所が構造計算した物件を再計算した結果、同区栄町の分譲マンション「ロセットROSSET江古田」(鉄筋5階建て)で偽装が判明したと発表した(2005年12月9日)。 建築確認したイーホームズ(東京・新宿)から同区が構造計算書などを取り寄せたところ、普段の状態で梁にかかる力の値が実際の半分で計算されていた。一部の柱や梁で鉄筋数が基準に満たず、建物の重みで梁などにひび割れが生じる恐れがあり、補強の必要がある(「東京都練馬区でも分譲マンション1件の耐震偽装判明」日本経済新聞2005年12月9日)。

イーホームズ、問題発覚後の再調査でも偽造を見抜けず(グランドステージ千歳烏山)

イーホームズが問題発覚後の再調査でも見抜けなかった物件が、東京都世田谷区の再々調査で偽造が判明した。イーホームズの調査能力のなさを物語る事実である。再調査で見抜けぬとは。調査する資格そのものがないということである。あるいは調査しなかったか。問題のマンションは姉歯建築設計事務所が関与した分譲マンション「グランドステージ千歳烏山」(5階建て、31戸)である。

イーホームズ及び世田谷区による問題発覚後の再検査で偽造はないとされていたが、世田谷区は2005年12月12日に構造計算書が偽装されていたと発表した。耐震性は建築基準法に基づく最低基準の34%しかなく、震度五強の地震で倒壊の恐れがある。その後の調査で姉歯秀次元一級建築士が構造計算書に加え、構造図も偽造した疑いの強いことが判明している。

グランドステージ千歳烏山は、ヒューザーが建築主で、エスエスエー建築都市設計事務所が設計を担当。施工は木村建設である。民間のイーホームズが建築確認をし、2003年5月に完成した(「東京で新たに1件強度不足 ヒューザーのマンション」共同通信2005年12月12日)。

イーホームズと世田谷区が問題発覚後の再検査でも偽造を見抜けなかったことに対し、入居者から「あまりにずさん」と非難の声が上がっている。再調査でも偽造を見抜けなかったことについて、区は「もっと慎重に調査すべきで、混乱させて申し訳ない」と住民側に謝罪した。しかし、入居者の30代の主婦は「一度は問題ないと言われたのに。こんな耐震性では転居するしかなく、区の対応は許せない」と怒りが収まりそうにない(「<耐震偽造>世田谷のマンション、姉歯氏が構造図も偽造か」毎日新聞2005年12月12日)。

イーホームズは、偽装事件発覚後に設計会社から提出を受けて再検査した姉歯物件の複数物件について、偽造の有無を判断できずに送り返していた。「問題なし」と回答したものの、後に偽造と発覚した物件もある(「<耐震偽造>イーホームズ、再検査物件も偽造の判断できず」毎日新聞2005年12月29日)。

不信の広がり

耐震強度偽装事件から、自分達のマンションの耐震性に不安を抱いたマンション住人や管理組合は数多い。同様の問題が他でも発覚するのではないかと、分譲マンションに住む者としては、安心できない日々が続く。

市民の多くは「我が家は大丈夫だろうか」という不安に襲われたに違いない(高田浩之「信用の砦“倒壊”の責任は」読売新聞2005年11月24日)。「何しろこれだけの大問題。うちのマンションは大丈夫かと考えるのが自然だろう」(「一日一言」四国新聞2005年12月7日)。

「偽造への不安は、まだ名前が公表されていないマンションの住人とともに、全国のマンション購入者などにも広がっているのではないか」(「[耐震強度偽造] 一斉点検を早急に」沖縄タイムス2005年11月20日)。

「他の設計事務所でも同じような手抜きや偽造が行われているのではないかという建築確認の制度そのものについての不信感も強まっている」(渡辺智衛「欠陥マンション 信頼回復は国の責任で」福島民報2005年11月24日)。

「姉歯秀次元建築士とは無関係の物件に住んでいるからと言って、安心できる筈がない」(藤後野里子「「無料耐震」チェックに引っかかるな!」サンデー毎日2005年12月25日号27頁)。

「<姉歯>は平成の世のごまかしの代名詞になるだろうが、それだけでなく、類似の欠陥建築物が際限なくあるのではないか、という切迫した不安が日本列島を覆うことになった」(石見隆夫「サンデー時評」サンデー毎日2005年12月25日号41頁)。

耐震強度の偽装問題で、既に名前の挙がっている業者や設計士だけでなく、他でも偽装が行われている、との疑いを持つ人は93%に達する。朝日新聞社が2005年12月17、18の両日に実施した全国世論調査で明らかになった(「分譲マンション居住者「強度調べたい」62% 世論調査」朝日新聞2005年12月20日)。

安全性は断言できない

耐震強度偽装事件は大きな話題になったが、調査・確認はしても「当社の建物は大丈夫です。御安心ください。」と積極的に図面を出して安全性をアピールする会社はない。どこの会社も程度の差こそあれ、同じようなことをしていると考えるのが妥当である。「一連の事件関係者とは無関係との説明が分譲会社からあったが、それだけでは不十分。耐震面で安心であることをきちんと説明してほしい」との住民の思いからは乖離している。

大手不動産会社の広報担当者は「安全と言い切るのは、そう簡単なことではない」「1棟残らず大丈夫と言うには膨大な作業が必要」と語る(「業者 不安解消に懸命」朝日新聞夕刊2005年12月5日)。

シーエス設計の小林晃社長は「信頼できる第三者が計算をし直さない限り、本当に危なくないのかどうか断定はできない」と指摘する(臼井昭仁「「非姉歯」物件の強度」AERA 2006年1月2-9日号24頁)。

相談が殺到

耐震強度偽装事件発覚後、自治体や業界団体に相談や問い合わせが相次いでいる。蓄積されていた建築・不動産業界に対する不信が噴出した形である。目の前の危機に目をつぶってしまうような人は救いようがない。放置するしかない。しかし、自分が住む住居の危険を知ろうとし、何らかの対処をしたいと考える人に対しては、各方面からのサポートを行っていくべきである。

社団法人「東京都建築士事務所協会」(新宿区、電話03-5339-8288)では、職員が午前9時から午後5時まで、無料相談に応じている。問題発覚後、「ウチのマンションは大丈夫か」といった相談が1日約60件ある(「マンション住民に不安、建築士団体へ相談殺到」読売新聞2005年11月25日)。「来年入居予定だが、確認検査機関が(姉歯事務所の偽造を見逃した)イーホームズなので不安だ」という相談もある(「<耐震偽造>「ウチは大丈夫か?」 相談、問い合わせ殺到」毎日新聞2005年11月24日)。

NPO法人「福岡マンション管理組合連合会」(杉本典夫理事長)は2006年1月10日、耐震データ偽造問題に絡み、分譲マンションを対象にした建物構造の総点検を求める要望書を福岡県に提出した(「耐震計算偽造:分譲マンション総点検を 管理組合連合会、県に要望書提出 /福岡」毎日新聞2006年1月11日)。

宮城県の団体は統一相談窓口を設置

耐震強度偽装問題を受け、宮城県建築設計事務所協会と日本建築構造技術者協会東北支部、仙台建築構造事務所協会は、マンションの管理組合などを対象とした統一の相談窓口を設置した(2005年12月12日)。竣工図や構造計算書を預かって、偽装などがないかを無料で検証する。場合によっては、有料で現場確認も行う考えとする(「耐震偽装の不安解消 建築設計3者が無料検証」河北新報2005年12月13日)。 統一相談窓口にはマンション管理組合からの相談が殺到している。設置から一カ月足らずで、58棟の相談が持ち込まれ、居住者の不安を浮き彫りにした。県建築設計事務所協会の松田純也専務理事は「相談件数は予想以上で、それだけ入居者の不安が大きいという証拠だ。事件の節目ごとに、相談はさらに増えるのではないか」と指摘する(「マンション相談殺到 耐震強度偽装事件引き金」河北新報1月13日)。

耐震強度が関心事

持ち家一戸建て住宅への住み替え(購入や建築)を希望する人の主な関心事は、欠陥住宅の事件、地盤の強度、住宅の耐震性能である。不動産ポータルサイト「HOME'S」を運営するネクストが実施した「持ち家一戸建て希望者の意識調査」で明らかになった。

家の購入や建築に当たって興味がある話題を聞いた問いでは、「欠陥住宅・手抜き工事事件(60%)」(男性:54.9%、女性:64.5%)が1位である。2位は「建築予定地・周辺の地盤の強度(52.8%)」(男性:48.0%、女性:57.0%)、3位は「住宅の耐震強度、耐震性能(50.0%)」(男性:44.5%、女性:54.9%)。2005年11月以来の構造計算書偽造事件の影響を感じさせる項目が上位を占めた(株式会社ネクスト「持ち家一戸建て希望者の関心事は「欠陥住宅」「地盤強度」「耐震性能」」2006年3月9日)。

消費者の98.6%が「欠陥住宅・耐震偽装物件はもっとある」と回答

ユナイテッドルームズが不動産会社の情報開示についてのアンケート調査を発表した(鴨沢浅葱「「欠陥住宅・耐震偽装物件はもっとある」と思う人が約99%」nikkeibp.jp 2006年4月20日)。耐震強度偽造問題にあったような、欠陥住宅・耐震偽装物件がまだ隠されていると考える人が98.6%に達することがわかった。住宅の安全性には根強い不安があるという。

質問は「欠陥住宅・耐震偽造問題を受け、他にもそういった物件が隠されていると思うか」で、これに対し、「とてもそう思う」が68.3%、「どちらかといえばそう思う」が28.5%で、合わせて98.6%に達した。

また、「不動産会社が公開する情報は少ないと思うか」という質問には、「とてもそう思う」が36.3%、「どちらかといえばそう思う」が49.5%で、計85.8%が情報開示が不十分であると感じていた。

開示すべきだと思う情報は、「第3社機関・公的機関からの物件の性能評価」「設計図書・構造計算書の設置・閲覧・解説本の作成」「建設現場の見学会・建設現場の映像や画像」が上位で、「たとえ内容の詳細を理解することは難しくても、物件に対する安心感を抱かせる情報を求めている」という(同社)。

「消費者は、建物の構造や住宅の安全性について十分な情報を持っているとは言いがたい。消費者がそうした情報をきちんと吟味できれば、危険な住宅の価格は下がるため、販売・施工会社が利益を得るためには、安全性の高い住宅を建てなければならないと考えるようになる」(山崎福寿「保険活用と情報開示急げ」読売新聞2006年4月27日)。

偽装物件の近隣も被害

耐震強度偽装物件の近隣住民も倒壊の恐怖に脅えている。マンション外壁から自宅の塀まで50cmしか離れていない家もあり、住民は「いつ建物が崩れてくるか、不安でたまらない」と訴える(「<耐震偽造>近隣住民が悲鳴 「いつ崩れてくるか不安」と」毎日新聞2005年11月25日)。大地震が起きた場合、損害は偽装マンション住民に限らず、耐震基準に満たない建物のある都市そのものに、甚大な被害を及ぼすことになる。

木村建設が、熊本市で建設していたマンションのすぐ隣にある居酒屋兼食堂「肥後」が閉店した(2005年12月22日)。松本佐知子・店主は「工事再開の見通しが立たず、耐震性にも不安がぬぐえない」と話す。33年間続いてきた店は、事件の影響をもろにかぶった。

「肥後」は市中心部にあり、9階建てのマンションの工期は2005年6月〜2006年2月の予定であったが、11月下旬から工事が中断した。マンションとの境は最も狭い所で数十センチしかなく、足場などはそのままになっている。工事が始まってから店の床や壁がひび割れたり、基礎や作り付けの棚がずれたりした。工事関係者に申し入れ、ようやく木村建設から修理の約束を取り付けた直後に問題が発覚した。

工事の騒音などで客足は遠のき、ここ数カ月は赤字が続いていた。松本店主は「市は『耐震性は大丈夫』と言うけれど、実際に壁などの中を調べたわけではない。徹底調査をお願いしたが、結果が分かるのは何カ月も先。その間、万一のことが起きたらお客さんに申し訳ない」と話す(平野美紀「耐震偽造:「不安ぬぐえない」木村物件隣接店が閉店 熊本」毎日新聞2005年12月24日)。


(C) 東急リバブル・東急不動産不買運動 2005 All rights reserved. TOP
inserted by FC2 system