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ゼファーの問題

ゼファー月島で耐震強度偽装

国土交通省は元1級建築士の姉歯秀次被告による偽造物件が1件増え99件になった、と発表した(2006年6月16日)。問題の物件は東京都中央区佃の分譲マンション「ゼファー月島」(8階建て、20戸)である(「<耐震偽造>姉歯被告の問題物件、1件増え99件に」毎日新聞2006年6月16日)。

ゼファー月島は1997年5月に同区が建築確認し、98年5月に完成した(「「最初の耐震偽装」確認 東京・中央区のマンション」共同通信2006円6月16日)。姉歯被告が、最初に偽装をしたと国会で証言した物件「グランドステージ池上」より1年以上前になる。姉歯被告の国会証言が虚偽だった疑いが強まっており、捜査本部は、議院証言法違反(偽証)容疑で調べを進めている。

警視庁などの合同捜査本部が、このマンションの耐震強度を調べた結果、基準の6割程度だったことが判明(「東京・中央区の物件に「GS池上」前の偽装形跡」読売新聞2006年6月15日)。中央区は、姉歯被告が構造計算書を改竄した形跡があると国土交通省に報告した(2006年6月15日)。中央区が再計算した結果、建築基準法の最低基準の43%であることが判明した(2006年7月14日)。

中央区は1997年の建築確認の際、偽装を見過ごした。一連の問題が発覚した直後の2005年12月、構造計算を行っていないのに「再計算の結果、耐震性に問題なし」と国交省に誤った報告をした(「最初の偽装物件強度43% 誤報告で中央区長ら処分へ」共同通信2006年7月14日)。

ゼファーはゼファー月島が姉歯秀次元建築士が構造設計した物件であることを知りながら、建築主として独自に耐震強度を調査しなかった。姉歯元建築士が偽装を供述するまで何もせず、中央区役所に責任を転嫁している。企業の姿勢として批判は免れない。

ゼファーの大嘘

ゼファー月島の耐震強度偽装発覚により、ゼファーは東急リバブル東急不動産同様、口先だけの不誠実な業者であることが判明した。耐震強度偽装事件発覚後、ゼファーは創業以来、自社で分譲したマンションなど約150棟の構造計画書を再確認すると発表した(2005年11月29日)。設計時に関わった設計事務所以外の会社に再確認を依頼する。費用はゼファーが全額負担し、結果はマンション管理組合や購入者に通知する。今回、購入者や契約者に安心してもらう目的で、自主的な再確認を実施するとした。

ゼファーが実際に再確認を実施したかは不明であるが、外部から指摘されるまでゼファーはゼファー月島の耐震強度偽装を明らかにしなかった。加えてゼファーは上記発表時点で、これまで分譲した物件について、姉歯建築設計事務所とは取引がなかったことを確認済みとしていた(「分譲した全マンションの構造計算を再確認、ゼファー」建設総合サイトKEN-Platz 2005年11月30日)。しかし実際はゼファー月島の構造設計者は姉歯元建築士であった。

ゼファー巨大マンション「サクラディア」に住民抗議

巨大マンション「サクラディア」((仮称)さいたま市桜区道場プロジェクト、さいたま市桜区道場二丁目)に近隣住民が抗議している。「(仮称)さいたま市桜区道場プロジェクト」は東日本鉄工埼玉工場跡地(約3万6千平方メートル)に地上15階、地下1階(862戸)の巨大マンションを建設する計画である。周辺住民は「地域の環境を守る会」(島崎勝雄会長)を結成した。

売主は相鉄不動産株式会社、エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社、株式会社NIPPOコーポレーション、株式会社新日本建物、住友商事株式会社、セコムホームライフ株式会社、日鉱不動産株式会社、株式会社ゼファー。販売提携(代理)は住友不動産販売株式会社、住商建物株式会社、相鉄不動産販売株式会社。設計・監理は株式会社ゼファー一級建築士事務所。施工は株式会社ゼファーである。

東日本鉄工埼玉工場解体作業に抗議

2006年2月26日には住民抗議で東日本鉄工埼玉工場の解体作業が中断した。「地域の環境を守る会」(島崎勝雄会長)が「振動や騒音に耐えられない」と現場の責任者に抗議した。解体作業の責任者は「住民と協議するまでは再開しない」と約束して作業を一時中断した。

解体作業をめぐっては、近くの主婦(49)が「作業に伴う揺れで船酔いのような状態になり、娘(23)も私もめまい用の薬を飲んで通院している」と話す。現場の西側に住む住民は「21日午前10時過ぎ、解体現場からコンクリート片が数十個、塀を越えて飛び込んできて、車を傷つけられた。警察を呼び、作業関係者も来たが、謝罪もせず、コンクリート片を拾って持ち帰った」と訴える。

解体工事は2005年秋から行っている。約40人の周辺住民は午前8時30分に横断幕を掲げて現場入り口に集合。島崎会長らが約一時間にわたり「このまま解体作業を続けられては、住民の命にかかわる」と作業中断と、コンクリート片問題への文書での回答を現場の責任者に求めた。

解体作業の責任者は建築業者と電話でやり取りして一時中断としたほか、コンクリート片を持ち去った作業関係者が謝罪した。作業現場に隣接する市立栄和小学校は、「解体される建物が高い」として児童の安全のため、通学路を変更している。

サクラディアと地域の環境を守る会

(無題) 投稿者:応援しています。 投稿日:11月 2日(木)09時31分6秒
昨日納税のため区役所に行ったのですが
職員の事務机のいたるところに
サクラディアの広告箱ティッシュが置いておりました。
ゼファーがばら撒いたものと思われます。
これによってさいたま市は今まで以上に業者に甘くなることも考えられます。
みんなで今後とも騒音・振動・迷惑行為の徹底監視をしましょう。

(無題) 投稿者:匿名 投稿日:11月 5日(日)14時37分38秒
地域の環境を守る会の一人として投稿します。
まず、旧東日本鉄工の工場を解体する前に、お知らせ看板を掲げず、近隣住民に何が建つの知らせないまま解体し始めたこと、解体業者も何が建つのか知らぬ存ぜぬを押し通し始めたことが、近隣住民に不信感を抱かせた大きな一因であると思います。
このような中高層マンションが林立する地域でどのようなことが起こっているかマンション購入者は、よく調べてから決められることをお勧めします。
ある地域では、幼稚園に入園する為に、この少子化といわれている時代に、徹夜して願書を提出するという事態にまでなっているそうです。
大規模なマンションを購入するにあたっては、人口増加にともなう地域の受け入れ態勢や周辺の環境が整っているかどうかが、重要なのではないでしょうか。
いいことばかりの広告に惑わされず、是非、賢い選択をされますよう、お勧めします。

術中にはまる 投稿者:管理人 投稿日:11月24日(金)18時17分32秒
住民は、まんまと業者の術中にはめられてしまった、、、。金額の交渉をしていただけだったのに、いつの間にか最終交渉のようになってしまった。住民提案どおりに日影補償額と工事迷惑料を出す交換条件として、「横断幕を降ろす」という約束をさせられてしまったのだ。
基礎工事が始まり、分譲販売も始めようとする時、横断幕は業者にとって実にうっとうしいものだったに違いない。しかし、住民にとって横断幕は、最後の切り札であり、命綱だった。「白紙に戻す!」などという脅しに乗らず、腹をくくって結束を緩めなかったら、きっと向こうが折れてきた筈である。その場しのぎに過ぎない金を握らされて、設計計画を変更させるという本来の目的は、揉み消されてしまった。敵の術中にはめられたというより、失敗の兆しは内部の足並みの乱れにあったが、内部分裂を起こさせたのも、敵の術策の一つだったのかも知れない、、、。
しかし、住民の闘いは、まだ終わったわけではない。業者が、工事協定書に違反したり、合意書の内容を誠実に履行しなければ、横断幕は再び掲げられるのだから。 今後の業者の行動を注意深く看視していかなければならない。

うやむやになった未解決問題 投稿者:管理人 投稿日:11月25日(土)18時14分22秒
確かに現段階では会としての運動が、渋滞道路問題も学校問題もすべて未解決のまま、終息してしまいそうな雲行きです。渋滞道路問題や学校問題の解決もすべて地域環境を無視した建設計画の見直しにかかっています。
しかし、地域住民が、開発業者から建設計画の見直しを勝ち取ることは、住民によほどの根気強さと団結力がなければ、達成できるものではありません。長い膠着状態が続く中で、業者から最初に提示されたものに数倍する日影補償費と工事迷惑料が提示された時、住民の中に「この辺が手の打ちどころ」という気持が生れたのも無理はありません。
取り交わされた合意書によれば、日影補償と工事迷惑料の解決をもって今後、マンション建設に反対する活動は一切行なわないものとする、となっています。こうして日影補償と工事迷惑料の解決だけで、渋滞道路問題や学校問題は未解決のまま、うやむやにされてしまったのです。
しかし、業者は解体工事の時の対応と同じように、この日影補償と工事迷惑料の支払いにおいても不誠実な対応が見られます。合意書の内容を誠実に履行するか、工事協定書に違反する行為をしていないか、看視の目を光らせていきたいと思います。

サクラディアさいたま市桜区道場に複合型免震マンション登場。@マンション掲示板

No.15 by 匿名さん 06/07/29(土) 22:39 
しかも北側に造られる来客者向け駐車場とテニスコート兼フットサル場は
さいたま都市計画道路道場三室線の道路用地として
事業認可が下りれば買収されてしまいます。
つまり、道路用地として買収されればその分、敷地面積が狭くなる。
将来同規模の建築物に建て替えることはできなくなります。
区分所有占域を確認しておかないと大変なことになりますよ! 

No.24 by 匿名さん 06/08/03(木) 11:06 
「郵送広告資料から」
クリニック
いくら健康に気を付けていても万が一は誰にでもあるものです。
かかりつけのお医者様がそばにいるだけで毎日安心して暮らせるはず。
具合が悪い時無理して遠くの病院まで行く必要もありませんね。
*診療科目は未定です。周辺住民はクリニックができることも知らされていなかった。
そのまえに、ペット可のマンション内に開設する診療所っていかがなものか?
しかも「診療科目は未定です」って、医者が開業するかも未定と言っているようなものではないのか?

ゼファー、近藤産業を子会社化

近藤産業は、近畿エリアを中心に分譲実績を持つマンションデベロッパーである。マンションブランドはメロディハイムである。過去に経営破綻し、ダイナシティ(中山諭社長)及びゴールドマン・サックス・グループとスポンサー契約を締結した。会社分割を用い、近藤産業の有力なマンション分譲事業を新たに設立する会社に承継、不動産賃貸事業と過剰債務から切り離すことで事業の早期再生を図る。会社分割は、2005年3月に完了する予定。

その後、ゼファーが子会社化した(「マンションデベロッパーの近藤産業を子会社化・・・ゼファー」週刊全国賃貸住宅新聞2006年1月30日)。ゼファーはゴールドマン・サックス証券会社の関連会社である米・ウインド・リアルティ・ファイナンス・ケイマン・カンパニーおよび花水木開発から、近藤産業の発行済み株式総数の50%に当たる株式を取得した。取得価格は25億円に上る。代表取締役社長は飯岡髟v・ゼファー社長が兼任する。

国土交通省発表偽造物件増加推移

発表日 偽装物件数 典拠
2005年11月17日 21 各紙
2005年12月5日 57 「耐震偽造被害/支援の「格差」が気になる」神戸新聞2005年12月7日
2005年12月13日 70 「基準半分未満、新たに6物件=耐震強度偽装70件に−国交省まとめ」時事通信2005年12月13日
2005年12月15日 73 「構造計算書の改ざん73棟に…国交省発表」読売新聞2005年12月15日
2005年12月16日 75 「<耐震偽造>新たに2棟確認、17都府県75棟に 国交省」毎日新聞2005年12月16日
2005年12月28日 88 「<耐震偽造>姉歯物件、3件増えて88件に 国交省発表」毎日新聞2005年12月28日
2006年1月11日 93 「<耐震偽造>姉歯物件新たに4件増え、93物件に 国交省」毎日新聞2006年1月11日
2006年1月16日 94 「改ざん物件94件に」読売新聞2006年1月17日
2006年1月20日 95 「<耐震偽造>姉歯関与1件増え、計95件に」毎日新聞2006年1月20日
「新たに偽装確認、計95件に 足立区のマンション」共同通信2006年1月20日
2006年1月30日 97 「耐震偽装、97物件に=国土交通省」時事通信2006年1月30日

非姉歯物件でも偽装

姉歯物件以外でも偽装は行われていた。偽装は姉歯元建築士だけではない。姉歯秀次元建築士は氷山の一角に過ぎない。姉歯元建築士が偽装していたということは「別の人も同じことを行っているのでは」と感じさせる。姉歯元建築士の偽装から、さらに鉄筋量を減らして木村建設が施工した建物もある。

「「姉歯以外」での偽装が確認されれば、問題は姉歯固有のものではなく一般的な構図に広がってしまうことになり、日本の建築の信用が完全に崩壊する事態となる」(「「非姉歯」拡大なら底なし 国交省、木村の169件重点調査」産経新聞2005年12月21日)。

建設業関係者は「『非姉歯』からクロが出れば底なしの様相となり、マンションの買い控えなどが進んで業界は計り知れないダメージを受ける」と話す(「耐震偽装 「非姉歯」163件シロ 残り278件 全容解明は中旬以降」産経新聞2006年1月7日)。

木村建設(熊本県八代市、破産手続中)が関与した物件は169件、ヒューザー及び平成設計の関与は90件である(「木村建設関与は169件=調査対象数を訂正−国交省」時事通信2005年12月15日)。姉歯元建築士以上に鉄筋量を減らしていた設計士が存在した。木村建設が施工したホテルのうち、姉歯秀次・元一級建築士が構造計算に関与していない9棟のホテルでも、鉄筋使用量が「姉歯物件」並みに少ないものがある。

1998年11月に着工したとされるホテルなど2棟の鉄筋量は、最も鉄筋量の少なかった「姉歯物件」を下回っていた(「木村建設施工のホテル、姉歯以外の9棟も鉄筋量不足か」読売新聞2005年12月16日)。北側国交相は「『姉歯』以外に、鉄筋が非常に少ないものがあると判明した。木村建設のしかるべき方からよく事情を聴きたい」と述べた(「鉄筋少ない物件、他にも 国交省が調査へ」朝日新聞2005年12月16日)。

国土交通省の小出し発表

国土交通省は偽装の有無を優先的に調査するとするが、調査結果の全貌は一向に発表されない。発表されるのは途中経過ばかりである。例えば国交省は2006年1月12日に総研が開業指導したホテルについて行っている調査の途中経過を発表した。姉歯秀次元建築士と木村建設、ヒューザー、平成設計が関わっていない119件中、調査を終えた26件については構造計算書は改竄されていないとする(「<耐震偽造>総研物件の調査途中経過はシロ 国交省」毎日新聞2006年1月12日)。

国交省には小出しに発表せざるを得ない理由があるのだろうか。当たり籤は残りの部分に隠されているとの疑念を抱きたくなる。調査結果にも不審点がある。「耐震強度に問題がなかった」ではなく、「構造計算書は改竄されていなかった」と、いつの間にか微妙に論点がすり替えられている。これでは構造計算そのものが初めから手抜き構造のいい加減なものであっても、審査する過程で、書面の「改竄」さえ行われていなければ「問題なし」という意味に解釈できてしまう。問題は耐震強度の有無であった筈である。

木村建設の手抜き工事

木村建設(熊本県八代市)は阪神大震災の翌年の1996年から、経済設計と称する鉄筋量の少ない地震に耐えないホテルを立てていた。マンション建設ではヒューザーの厳しいコストダウン要求を背景に、姉歯秀次元建築士の構造計算書偽造に加え、建設現場で不正な工法が横行していた構図も浮上している。

木村建設、グランドステージ藤沢の手抜き工事疑惑

姉歯秀次元一級建築士が構造計算書を偽造した分譲マンション「グランドステージ藤沢」(神奈川県藤沢市)では施工した木村建設(熊本県八代市)による手抜き工事が指摘されている。手抜き工事は民主党の下条みつ衆院議員による調査で明らかになった。グランドステージ藤沢の設計は森田設計事務所が担当した。

グランドステージ藤沢では基となる構造図と、現場用の施工図に食い違いがある。木村建設が建設段階で作った施工図は、姉歯元建築士が作成した構造図よりも軟弱なものであった。地震の揺れを吸収する「スリット」と呼ばれるすきまを減らしたり、配置場所を変えたりされていた。姉歯氏によって経済設計された上に、施工業者が柱・梁・鉄筋から基礎まで安く上げるためにスカスカにしていたことになる。

姉歯元建築士作成の構造図では、マンション一階の壁の二十カ所にスリットが入っているのに対し、施工図では半分の十カ所に入っているだけだった。スリットは地震の際、柱と壁が揺れ合ってできるずれで破壊されるのを防ぐために設けられる(「施工図の強度、構造図より劣る 耐震偽造のマンション」朝日新聞2005年12月22日)。配置もほとんど異なっていた。

構造図と施工図とを見比べた構造設計の専門家は「施工図では、明らかに壁がもろくなる。現場での手抜き工事のやり方だ。簡単でコストも削減でき、工事費が安くなるが、壁にひび割れができる上、耐震性にも影響を及ぼしかねない」と話す(「木村建設、手抜き工事か」東京新聞2005年12月22日)。

読売新聞社による非破壊検査では建物全体を支えている地下一階の柱の鉄筋が必要量の半分以下しかなく、「耐力壁」の鉄筋も通常求められるものより細いことを確認した。住民側に渡された「工事監理報告書」と「施工結果報告書」には、事実と異なる工事名や構造が記されていたことも明らかになった(「地下の柱、鉄筋半分以下…藤沢のマンションで検査」読売新聞2006年1月5日)。

検査に立ち会った元住民は以下の疑問を呈した。「なぜこんな構造で検査が通るのか。図面をきちんと見たんだろうか」(「耐震偽装、GS藤沢非破壊検査「柱の中スカスカ」」読売新聞2006年1月5日)。

木村建設、シャブコン使用疑惑

グランドステージ藤沢ではJIS規格外の水の多い生コンクリートを使っていた疑いが強い。コンクリートに不適切に水が加えられた、いわゆる「シャブコン」が使用されていた疑いである。コンクリートポンプで流し込む時の流動性を増すために、水を多く加えた疑いである。

水が多くてもコンクリートは固まるが、内部に微細な空隙が多くなって強度は低下する。「後日、ハンマーで叩くと簡単に崩れたり、素手でかきだせるような劣悪なコンクリートになる」(橋本一郎、サラリーマンでもできるマンション投資・家賃収入で儲ける極意、明日香出版社、2004年、66頁)。

シャブコン使用は建物の強度に大きな影響を及ぼすことから、同マンションの耐震強度はさらに低下する可能性がある(「「姉歯偽装」のGS藤沢、水分多いコンクリ使う?」読売新聞2005年12月23日)。木村建設は「使っていない」と否定する。しかし業界に「シャブコン」という隠語があること自体、「そういうこともありなのか」と疑ってしまうのは当然であり、全容解明が待たれる。

グランドステージ藤沢のコンクリート写真公開

民主党の下条みつ衆院議員は、グランドステージ藤沢の建設現場に納入された生コンの写真を公開した(2006年1月16日)。黒板に書かれた数値と合致しない写真も含まれ、下条議員は「何らかの手を加えた軟らかいものが納入されたと推測できる」と話す。「測定値を改ざんしたのではないか」とも指摘した(「<耐震偽造>GS藤沢の強度さらに低い? 衆院委員が指摘」毎日新聞2006年1月12日)。

生コンはJIS規格で硬さが決められており、流した直後の広がり具合で硬度をチェックする。写真は建設現場に納入された当日、木村建設の現場監督が撮影した。建物全体の重量がかかる半地下部分に使う生コンをチェックした2005年1月28日の写真は、黒板には直径37センチと記されている。しかし写真は、それを大きく超えているように見え、規定外の軟らかい生コンの可能性が高い。下条議員はこの写真を一級建築士の他、複数の生コン業者にも見てもらい、規定通りではない可能性が高いとの回答を得たという(「耐震偽装 生コン硬度、規定外か 「藤沢」の現場写真公開」産経新聞2006年1月13日)。

木村建設、構造計算書を無断で差し替え(アルクイン黒崎)

木村建設は、ビジネスホテル施工に際し、日本ERIに提出した構造計算書を姉歯秀次元建築士の計算書に建築主に無断で差し替えた。問題の物件は「アルクイン黒崎」(北九州市、11階建て)である。

元平成設計幹部らによると、同社は2004年6月、設計会社「塩見」(広島市)にアルクイン黒崎の構造設計を発注した。同社は7月中旬、民間検査機関の日本ERIに構造計算書を提出した。木村建設はその後、ホテル部で会議を開催。「塩見では鉄筋量が多い。姉歯氏なら1平方メートル当たり約70キロでできる」と計算書の差し替えを話し合った。

木村社長は会議に出席しなかったが、数日後、平成設計担当者に直接電話した。ホテル外観などを描いた意匠図を木村建設の篠塚明東京支店長(当時)に送るよう指示した。「構造計算書を作成するための意匠図を送れ」と言ったという。篠塚氏が姉歯氏の窓口的存在だったことは当時、両社内で広く知られていた。元平成幹部は「木村社長が構造計算書を姉歯氏のものに差し替えようとしていると思った」と話す。構造計算書は既に日本ERIに提出されていたが、その後、建築主に無断で姉歯秀次元建築士の計算書に差し替えられた。>

木村社長は普段から姉歯氏の構造設計を高く評価していたという。木村社長は姉歯氏が構造計算したホテルの例を挙げ、「14階建てぐらいなら鉄筋コンクリート造りでいける」と周囲に話し、鉄骨を使わず少量の鉄筋で済む設計を評価していた。「姉歯氏と(木村建設)の関係はあまり知らない」とした国会証言と異なる実態も判明した(「木村社長、直接指示か=担当者に「意匠図送れ」−構造計算書差し替え疑惑」時事通信2006年1月14日)。木村建設社内では建築士ごとに鉄筋量を比較した積算対比表が出回っており、幹部は目を通していたという。

アルクイン黒崎施工に際し、木村建設が鉄筋減量で削減した経費は約270万円である。関係者の証言で判明した(2006年1月10日)。問題発覚で休業した同ホテルの改修費は1億2000万〜1億3000万円に上るとされる。建築主は、目先の利益を追い、甚大なツケを生じさせた業者側の体質に怒りをあらわにしている(「鉄筋減量で「270万円」=改修費は1億2000万円超−北九州のビジネスホテル」時事通信2006年1月10日)。

木村建設、自己破産

姉歯建築設計事務所による耐震構造計算書偽造物件施工の多くに関与していた木村建設は手形決済が不調に終わり、事業停止状態に陥った。帝国データバンクによると、負債は2005年10月末で約138億円(「<耐震偽造>木村建設が事業停止状態 負債は138億円」毎日新聞2005年11月22日)。

木村建設に続き、平成設計も自己破産を申し立てた。やばくなったら自己破産というのは、不良建設会社の常套手段である。木村建設も自己破産し、ほとぼりが冷めたら手形を買い直して、新たに違う会社名として出発することを企図していると思われる。偽造問題に関与した関係者は全員全財産没収して補償にあてるべきである。会社の倒産くらいでは許されない。個人レベルで取り立てるべきである。

グランドステージ東向島住民、木村建設に債権届け出へ

偽装物件「グランドステージ東向島」(東京都墨田区、36戸)の住民が、区内で住民集会を開き、マンションを建設した木村建設(熊本県八代市、破産)に対し、債権者として届け出ることを決めた(2006年2月26日)。グランドステージ東向島は耐震強度が基準の31%しかない。

住民代表の田中拓氏は届け出の理由について「金銭的な期待ではなく、いいかげんな物件を建てた責任を問うため」と話した。住民らは3月中旬までに全世帯分の債権届を取りまとめ、同建設の破産管財人に提出する(「木村建設に債権届け出へ 偽装物件住民が方針確認」共同通信2006年2月26日)。

構造設計費に木村建設が介在

姉歯秀次元一級建築士が木村建設施工の建物を下請けとして構造設計した際の費用を、木村側が元請け設計事務所に請求していたことが関係者の話で判明した(2006年1月9日)。元請け設計事務所との契約は木村建設が結んでおり、同社が姉歯氏に下請けさせていた。代金は同社を通じて姉歯元建築士に払われていたという。

関係者は「通常、構造設計は元請けが自分で発注し、代金も直接支払う。間に木村建設が入るのは不自然」と指摘する。同社と姉歯元建築士の密接な関係が改めて浮き彫りになった(「構造設計費、木村建設が請求=元請け設計事務所に−姉歯氏への支払いに介在」時事通信2006年1月10日)。

篠塚明・木村建設元支店長に有罪判決

一連の耐震強度偽装事件で偽装物件の施工主だった木村建設(熊本県八代市、破産)の財務諸表を粉飾し、国に提出したとして建設業法違反(虚偽申請)罪に問われた同社の元東京支店長篠塚明被告に対し、東京地裁(登石郁朗裁判長)は懲役1年、執行猶予3年(求刑は懲役1年6月)の判決を言い渡した(2006年11月1日)。

公判で検察側は「実質的ナンバー2として積極的に関与した。財務が劣悪なのに特定建設業の許可を維持したことが過度なコストダウンに走らせ、耐震偽装事件を誘発させた面もある」と指摘した。これに対し、弁護側は「虚偽申請などは知らなかった」と無実を主張した(「篠塚元支店長に有罪判決」スポーツニッポン2006年11月1日)。被告側は控訴について「検討する」としている。

篠塚被告は同社の社長木村盛好被告らと共謀。木村建設が債務超過となった1997年頃から、木村盛好被告の指示で粉飾決算を続けた。2004年9月、約13億4000万円の債務超過だった同社の2004年6月期を約4億3000万円の黒字と偽った貸借対照表を国土交通省九州地方整備局に提出。2005年6月、同整備局から特定建設業の許可更新を受けた。木村被告は公判に検察側証人として出廷し「篠塚被告は粉飾を知っていた」と証言した。

登石裁判長は、「組織的で計画的」と指摘。篠塚被告は2004年6月期の役員会議で、東京支店が受注した未完成の工事3件を売り上げに前倒し計上したと報告するなどし、「果たした役割は大きい」と認定した(「元支店長篠塚被告に有罪=木村建設粉飾「役割大きい」−耐震偽装事件・東京地裁」時事通信2006年11月1日)。 

総合経営研究所(総研)

総合経営研究所は経済設計と称する耐震性のないホテルの建設の指導を行っていた。内河健所長兼ゼネラル・マネージメント・コンサルタントは建設業界で「歯にきぬ着せぬ物言いで利益追求を語る業界のカリスマ的存在」(業界関係者)とされる。

業者を対象に各地でセミナーを開いていた(「木村建設、「総研」が経営指導」読売新聞2005年11月30日)。業界向けの会報(2005年夏発行)では建築士を替えてでも鉄筋を減らすように推奨していた(日下部聡「内川健社長の「罪と罰」」サンデー毎日2005年12月25日号30頁)。

木村建設の子会社である平成設計関係者は、内河所長らから「鉄筋の数を抑えろ」と直接指示を受けたと証言する。「断ることはまずできなかった」とする(「耐震性の裏付けなき数値 「統計値」で鉄筋削減」産経新聞2005年12月26日)。平成設計は本社が総研のビルに入居している。

平成設計は、内河所長の個人資産の賃貸収入などを管理する有限会社「内河」(東京都)など3社に、2001年以降だけで1億4000万円を超す金を支払っていた。総研がビジネスホテルを開業指導する度、設計を担当した平成設計から「企画料」や「指導料」として設計料の20-25%を受け取り、ホテル建設の情報提供に協力した関係者に謝礼として渡されていたという。「(設計料還流先の一部は)内河所長しか知らなかった」とされる(「総研の資金還流、「内河所長だけ認識」 耐震強度偽装」朝日新聞2006年1月10日)。

日本共産党の穀田恵二衆院議員は、証人喚問で内河氏に厳しく指摘した。「構造設計にとことんまで注意を払うということがあなたの事業の核心部分だ。会社ぐるみで偽造を行なったと断じざるを得ない」(「総研“鉄筋減らせる”指示・推奨2つのメモ」しんぶん赤旗2005年12月16日)。

「総研は自分たちとは別に、同じようなシステムを伝授し、それで手数料をさらに取っていた。要するに、そうした耐震データ偽造による施工・販売グループが他にもたくさんあるということです」(山岡俊介「耐震データ偽造事件一味のXデーは4月21日」ストレイ・ドッグ2006年4月20日)。

大手ゼネコン物件も偽造

大手ゼネコンの大林組、鹿島の施工物件でも偽造が行われていた。北側国交相は記者会見(2005年12月9日午前)で鹿島と大林組の偽装見逃しについて、「非常に残念だ。日本を代表するスーパーゼネコンが、関与した物件について下請けではあるが、偽装を見抜けなかった。なぜ見抜けなかったのか聴かせていただかなければならない」と話す(「「スーパーゼネコンがなぜ」国交省、鹿島・大林組聴取へ」朝日新聞2005年12月9日)。

鹿島と大林組は、国土交通省の事情聴取に対し「建築確認済みの図面の構造計算書を精査することはなく、偽装に気付かなかった」と説明した(「大手も「耐震偽装気付かず」=鹿島、大林組から聴取―国交省」時事通信2005年12月20日)。

大林組施工で強度試験データ偽造

大手ゼネコンの大林組が仙台市で施工した分譲マンション建設工事で、鉄筋工事を下請けした宮城県内の業者が、柱など鉄筋をガス圧接した部分の強度試験をせずにデータを偽造していた。強度試験はマンションのフロアごとに行われるが、データ偽造はマンション一棟当たり三割程度のフロアで確認されたという(「マンション圧接データ 2、3割で偽造確認 仙台市」河北新報2005年11月25日)。

仙台市建築指導課によると、この工事業者は宮城県亘理町の「カップリング圧接」である。偽造物件5棟は青葉区の2棟と宮城野、若林、太白区の各1棟で、7-12階建て。建築主は野村不動産が4棟、大和ハウス工業が1棟。このうち、青葉区と宮城野区の2棟は分譲を終え、既に住民が入居している(「鉄筋業者、溶接強度データ偽造…仙台のマンション5棟」読売新聞2005年11月25日)。

業者は試験機関の県産業工業技術センターが試験を実施したように見せ掛けて一棟につき約三割のデータを偽造していた。県産業技術総合センターの所長印が入った強度検査「引張試験」の成績表を無断で複製した。同センターに強度検査を依頼していないにもかかわらず、複製した成績表に鉄筋溶接部分の強度について架空の数値を記入し、元請けの大手ゼネコン「大林組」(東京)に提出した。業者は「工程がきつく検査の時間が取れなかった」と説明する(「大手ゼネコンも鉄筋の強度データ偽造」日刊スポーツ2005年11月25日)。

県警捜査2課と仙台南署は、公文書偽造、同行使の疑いで、同市宮城野区岩切、鉄筋工事業の30歳代の男の逮捕状を取った。県警は2005年12月5日、容疑者不詳で告発を受けた。同26日、男が実質的に経営する宮城県亘理町の鉄筋工事会社「カップリング圧接」や自宅などを家宅捜索していた(「強度成績書を偽造、容疑の鉄筋工事業の男逮捕へ…仙台」読売新聞2006年1月13日)。

鹿島施工のホテルで構造計算書改ざん

京都府は、府が建築確認をした二つのホテルで構造計算書に改ざんがあったことを発表した(2005年12月2日)。問題があったのは、姉歯建築設計事務所が構造計算をした「プラザホテル舞鶴」(京都府舞鶴市。設計者:平成設計、施工者:鹿島)と「シティーホテル峰山」(京丹後市。設計者:豊國建設、施工者:豊國建設)。

府は11月に確認申請書類の審査だけで、これらのホテルについて「改ざんはない」と発表していた。しかし、構造計算プログラムを使って再審査したところ、改ざんが見つかった。両ホテルは府からの要請を受け、12月2日から営業を休止した。ともに鉄筋コンクリート造、地上8階である(青野昌行「大手ゼネコンの施工でも偽造、京都のホテルで」建設総合サイトKEN-Platz 2005年12月4日)。

鹿島は「建築主の不動産業者から『欠陥があった場合の責任は木村に負わせる。ポイントで監理をしてくれればいいから元請けになってほしい』と頼まれ、建設費の数%を受け取る契約で応じた」と話す(広報室)。鹿島は現場に技術者一人を月数回派遣しただけで、鉄筋不足などには気付かなかったとしている。責任の所在の曖昧さが浮き彫りになった(「「姉歯」23物件、大手から木村建設に“丸投げ”」読売新聞2005年12月25日)。

大林組の施工でも偽造

大阪市は、市内のホテル「ヴィアイン新大阪ウエスト」(鉄筋コンクリート造、11階建て)で、構造計算書に改ざんがあったと発表した(2005年12月5日)。設計は平成設計で、施工は大林組が手がけた。

大阪市は2005年11月24日に「安全性は確保されている」と公表していたが、JR西日本の子会社で、ホテルを運営するジェイアール西日本デイリーサービスネットが専門機関に依頼して調査したところ、構造計算書の改ざんが見つかった。同ホテルは12月5日から営業を休止した(「大林組の施工でも偽造、鹿島に続いて大手で2件目」建設総合サイトKEN-Platz 2005年12月4日)。

鉄建建設、図面の縦横読み違えで強度不足

滋賀県彦根市大東町に建設中の20階建てマンション「グランスイート彦根ディアステージタワー(グランスイート彦根DSタワー)」(131戸)で、各階の床部分の強度が計画より不足していたことが判明した。分譲した総合商社の丸紅らが、既に契約が成立した78戸分について解約を求めている。このまま分譲すると、将来、床にひびが入る恐れがある。

グランスイート彦根DSタワーの事業主は丸紅と大和システムである。施工は鉄建建設株式会社大阪支店である。設計監理は鉄建建設株式会社大阪支店一級建築士事務所である。建築確認検査機関は株式会社国際確認検査センターである。建築確認番号はH17確認建築CIAS00831号(住宅棟)、H17確認建築CIAS00832号(駐車場棟)である。

グランスイート彦根DSタワーはJR彦根駅の近くに2005年夏に着工し、「高層20階から琵琶湖を望む」と宣伝。完成予定は2007年6月で、市内一の高層マンションになるという。2006年9月、10階部分の完成に伴って鉄建が実施した検査で、一部で強度に問題があることが判明した。スラブを検査したところ、2階から10階のスラブで設計より鉄筋量が少ない個所があった。各階とも床面積の約12分の1の範囲で、設計図では15cmだった配筋間隔が実際には20cmと広くなっていた。

設計図面通りに施工されていないことから、丸紅らは事業撤退を決定。成立した分譲契約は解約する。2006年11月15日付で契約者に事情を説明する手紙を送付。近く現地で説明会を開き、手付金を払い戻すとともに、同額の違約金を支払う等の手続きを進めるという。設計と異なるため建築確認の変更も申請する必要がある(「【湖東】設計図見誤り強度不足」中日新聞2006年11月19日)。

無反省なのは鉄建である。強度不足を「設計図を読み違えた現場の単純ミス」と説明する。現場で設計図の縦と横を読み違えたという信じ難い理由を主張する。しかも鉄建は鉄建は建物を解体するのではなく、補強工事をして、単独で販売する予定とする。問題判明後も工事を進め、11月24日現在、15階まで建設が進んでいる。無神経にも「できれば現在の契約者に、改めて契約をお願いしたい」と言い放った(「建設中の分譲マンション、解約へ 図面見誤り強度不足」朝日新聞2006年11月18日)。

東京の一建設、木造681棟で強度不足

住宅建設・販売の一(はじめ)建設(東京都練馬区)は、2000年から関東地方などで建て売りした木造2階建て住宅681棟が強度不足で、補修工事を始めたと発表した(2006年6月18日)。

同社ホームページによると、耐震強度偽装問題を受け調査したところ、いずれも柱と柱の間に斜めに渡す補強材「筋交い」が十分でなかった(「木造681棟で強度不足 東京の一建設」共同通信2006年6月19日)。同社は「設計委託した外部の設計事務所の計算ミスなどが原因」とする(「木造住宅681棟が強度不足、練馬区の宅建会社が発表」読売新聞2006年6月19日)。建築基準法では、木造2階建てに構造計算は義務付けられていない。

一建設(東京都練馬区)が公表している強度不足の分譲住宅の棟数に、疑いが抱かれている。同社は2006年6月18日、自社のホームぺージで、壁量不足の木造2階建て住宅が681棟あり、購入者全員に連絡済みと記載していた。ところが、同社の築4年の分譲住宅に住むA氏の元に一建設から連絡が入ったのは06年10月だ。A氏は「公表から4カ月も経ってから電話で連絡がきたので、不信感を抱いている。一建設に理由を問いただそうと思っている」と話す。

一建設強度不足設計者らの一級建築士資格取り消し

国土交通省は一級建築士の資格取り消し(7件)及び業務停止(13件)を発表した(2006年12月11日)。

都内や埼玉県などの一級建築士5人は「一(はじめ)建設」が分譲した一戸建て住宅設計業務の外注先で少なくとも97棟の強度不足の建物を設計したとして、資格取り消し処分とした。5人は国交省の聴聞に対し、「過去に設計した、似たような住宅の設計データを使い回し、コピーしてはり付けただけの設計図を提出していた」と説明。国交省では、実質的に耐震性の検証を省略していた悪質な事案と判断した。

また、強盗傷害などの罪が確定した北海道の建築士と、建築士の名義貸しをしていた福岡県の1人を取り消しとした。併せて、耐震強度不足が判明した、静岡県小山町のごみ固形燃料化施設を設計したゼネコン「フジタ」の一級建築士を業務停止6か月の処分とした。

業務停止となった13人には、北海道でマンションなどの構造計算を偽装していた浅沼良一・元2級建築士に構造設計を外注した建築士や、姉歯元建築士に誤った指示を出して強度不足を招いた建築士、ヒューザーのマンションの構造計算を誤った設計事務所の管理建築士らが含まれる。

「「一建設」強度不足、1級建築士5人の資格取り消し」読売新聞2006年12月11日
「強度不足の戸建て設計、建築士大量処分」朝日新聞2006年12月11日
「1級建築士7人取り消し 強度不足などで国交省」東京新聞2006年12月11日
平成18年度 一級建築士の処分事例について(第3回)

一建設が新たに住宅588棟の壁量不足を公表

分譲住宅会社の一建設(東京都練馬区)は2007年2月13日、新たに588棟の壁量不足の住宅があることを自社のホームページで公表した。2000年6月以降に建築確認を取得した全住宅(2万6035棟)を対象に外部調査を行い、自社でも再チェックを実施して判明した。

同社は2006年6月、引き渡し済み住宅の681棟に壁量不足があったことを公表していた。追加が出たことで、壁量不足の住宅の合計は1269棟になった。引き渡し済み住宅の約5%が壁量不足だったことになる。追加した588棟中、538棟の補修が完了。1269棟中59棟が未補修という。

一建設の堀口忠彦生産本部長は「前回の調査が不十分だったことを深くお詫びする。今回は全棟に対して外部機関と自社で二重チェックしたので、これ以上の追加はないはずだ。ただ、築年数の古い住宅はデータベース化されていないので、100パーセントないとは言い切れない」と話す。

日経ホームビルダーは2007年2月号で、一建設が06年6月に公表した棟数に疑いがあるという関係者の証言を伝えた。さらに3月号で、2月号の報道を受けて国土交通省が一建設に事実確認を行ったことと、国交省に対し一建設が681棟以外にも壁量不足の住宅があると認めたことを報じた。この段階では追加が何棟あるかは不明だった(「【トラブル】一建設が新たに住宅588棟の壁量不足を公表、合計1269棟に」ケンプラッツ2007/02/15)。

工事丸投げの弊害

耐震強度偽装事件の背景には「丸投げ」「名義貸し」が存在した。名前を貸すだけで手数料が入る、仕事については一切責任を負いませんよという契約が存在していた。名前を借りてカッコつける。物件が売りやすい。これは建築不動産業界の常道という。ブランド名だけを装った施工は消費者の目を誤魔化すことになる。

国土交通省は分譲マンションなどの施工業者が工事を別の業者に一括して下請けに出すいわゆる「丸投げ」について、全面禁止を含めて見直しを検討する方針を決めた(2005年12月30日)。国交相の諮問機関の社会資本整備審議会が今後、建設業法などの改正を議論する。北側一雄国交相が同日の臨時記者会見で明らかにした。

現行の建設業法でも業者の中間搾取防止のため、工事一括下請負(丸投げ)を原則的に禁止している。但し民間工事に限り、事前に発注者である建築主の承諾を書面で得た場合にだけ丸投げが許される。違反に罰則はないが、国交省総合政策局長通達で、営業停止15日の行政処分の対象となると決められている。

マンションなどの販売時には丸投げ情報の開示が義務付けられていない。消費者は実態が分からないのが現状である。消費者保護の観点から検討の必要があると判断した(「工事丸投げの禁止を検討 消費者保護の観点で国交省」共同通信2005年12月30日)。

シノケンが違法丸投げか

建設会社シノケン(福岡市)が設計、施工を受注した東京都内のマンションなど数件について、発注者から書面での承諾を得ず、木村建設(熊本県八代市、破産)に工事を丸投げしていた。木村建設関係者や発注者の話で判明した(2006年1月13日)。建設業法違反の疑いが強く、国土交通省は「事実関係を調査し、処分すべきものは処分したい」とする(「シノケンが違法丸投げか 偽装物件など木村建設に」共同通信2006年1月13日)。

偽装の構図

姉歯建築設計事務所による構造計算書偽造は確実にデベロッパー関係からの要請があったと思わざるを得ない。姉歯秀次一人で行ったと思っている人はほとんどいないであろう。ヒューザー、総研、木村建設、スペースワン、イーホームズ、日本ERIらと姉歯秀次元建築士は皆、同じ穴の狢に見える。

東京都内の複数の設計事務所が、施主の業者からの紹介で姉歯建築設計事務所に構造計算を発注していたことが判明している。姉歯事務所は「コスト削減のプレッシャーがあった」と話しており、建設費を抑えたい施主の依頼が偽造の原因となった可能性がある(「<ニセ耐震>施主の依頼が書類偽造の原因か」毎日新聞2005年11月18日)。

姉歯建築士は「業界の全体的な風潮の中で、コストを安くしなければならないとの意識があった。悪いことをやっているとの認識はなく、忙しすぎて感覚がまひしていた」と述べた(「建築士、1カ月前まで偽造 「悪いという認識なし」」共同通信2005年11月18日)。

姉歯元建築士は鉄筋の量を減らすことを強要されていたと証言する。「仕事の九割が木村建設だった」姉歯氏の立場にしてみれば「鉄筋を減らさねば今後仕事を回さないぞ」という言い方でも、一線を越えるのに十分な圧力だろう(「耐震偽装喚問/全体像解明し責任追及を」神戸新聞2005年12月15日)。

コスト削減

「姉歯元建築士の偽装の背景には木村建設、総研、ヒューザーの各社がめざした徹底したコスト削減があった」(「進む「姉歯」以外の偽装調査 対象全国で約600棟」朝日新聞2005年12月24日)。

木村建設関係者は以下のように振り返る。「コストダウンは永遠のテーマ。それを追求する中で、姉歯の『経済設計』に皆が飛びついた。その結果が、今回の問題につながった」(「【強制捜査(上)】“コスト減信者”が連携」読売新聞2005年12月21日)。

コスト削減は無条件に正しいと思ってしまう錯覚に陥らせがちである。コストを減らすことは大抵の場合、悪くはない。しかし、やってることが安易な場合も多い。単に値切ること等である。低コスト・短工期一辺倒の発想には建物の資産価値を高めるという社会貢献の意識はない。

コスト削減は価値の創造よりも容易である。売価100円の商品の原価50円を40円にする方が、売価100円を120円に上げることよりは易しいと考える人が大半だろう。従ってコスト削減に逃げたがる。ないものを造るよりも、在るものを減らす方が楽だからである。気をつけなければ、そればかりになり、ビジネスが縮小均衡してしまう。

昨今の上向き景気も、強い立場の企業が強烈な圧力によるコスト削減を弱い立場の企業に求めた結果の高利益がもたらした面が大きい。あくまで上辺だけの、一握りの人間だけがおいしい思いをする景気に過ぎない。

姉歯秀次元建築士による独自偽装

耐震強度偽装には船橋市内のマンションや一戸建てを舞台とした第三ルートがある。木村建設や子会社の平成設計の下請けとして偽装を重ねたホテルとは別ルートである。ヒューザーのマンションとも異なるルートである。

姉歯秀次元一級建築士が警視庁と千葉、神奈川両県の合同捜査本部による事情聴取に「木村建設や平成設計から受注したマンションとホテルのルートとは全く関係のない物件でも、構造計算書を偽造していた」と供述していることが判明した(2005年12月29日)。合同捜査本部は、姉歯元建築士が下請けで覚えた手口を悪用し、自ら積極的に耐震強度を偽装していた疑いがあるとみて調べている(「「木村物件」以外でも偽造 姉歯氏自身が積極関与か」熊本日日新聞2005年12月21日)。

姉歯元建築士に同情の余地なし

家を失いローンだけが残る被害者のことを考えれば姉歯秀次元建築士に同情の余地はない。姉歯元建築士の事情を理解することはできても、苦しみを分かち合う気には到底なれない。被害者にとっては自分自身の生命と財産を確保できて初めて「気の毒に」の一言も出てくるであろう。

木村建設らから「設計会社は他にいくらでもある」と言われたとしても、姉歯元建築士は以下のように答えるべきであった。「いいですよ。別の設計会社にしても。法律を破ってまで偽造はしません。それが一級建築士としてのプライドですから」。

建築士の責任

構造計算書偽造問題は不動産・建築業界に関わる者全体の腐った構造体質がもたらした問題である。建設、設計、検査に関わる構造そのものに、悪を育む土壌が存在している。建築業界がこれほどまでに緩みきった体質であることに驚きを禁じ得ない。人命に関わる問題であるにも関わらず淡々としている姉歯建築士は信じ難い。それ以上に、それを許す土壌が存在することが恐ろしい。

技術者の良心は存在しない。自らの仕事にプライドを持っていたら、恥ずかしくてできない筈である。偽造とまではいかなくても、建物に対する愛情が乏しい状況が存在する。平然と「マンションなんて、自分なら住みたくないね(苦笑)」と嘯く業界である。愛情を受けなかった子どもが不幸なのと同様、愛情なく建てられた建物が健全である筈がない。

建築士(設計士)は本来、安全で快適な居住空間を創り出すものである。家は、その人が欲して住むことのために建築すべきである。その精神を持って仕事をすることが大切である。「入居者や購入者ではなく、元請けである建設会社の意向のほうを重視した結果の不正である」(森希宗子「住まいの相談室」新しい住まいの設計2006年2月号129頁)。「重い責任を託された職業人としての自覚がもう少しあったなら、こんな事態を招いただろうか」(「「職業人」の倫理を磨こう」朝日新聞2005年12月31日)。

名古屋大の福和伸夫教授(耐震工学)は以下のように語る。「ルールを順守できない建築家は存在してはいけない。基準を守ることは最低限で、人の命や財産を守る仕事に就いているという崇高な倫理観が求められる」(「不正相次ぐ科技立国 ニッポン」東京新聞2005年12月29日)。

「建築物の安全は建築士や建築主らのモラルに頼っていてもダメということが分かった以上、法律で規制するのは当然である」(「耐震強度偽装防止策/第三者機関の監視体制を」山陰中央新報2006年1月31日)。

建築士報道の謎

耐震強度偽装事件の報道は不思議と建築士に関する職能が絡むと、途端に曖昧になる。きちんと監理しなかった元請設計事務所。自殺したとされる森田設計事務所の森田信秀建築士。偽装を告発されたアトラス設計の渡辺朋幸代表についてもイーホームズ藤田社長から疑惑が提起されている。しかし、マスメディアは全く報道していない。

メディアで騒がれている建築士は、姉歯秀次元建築士たった一人である。登場するのはデベロッパーやゼネコン、コンサルタントらの、似非建築士ばかりである。マスメディアが終始近視眼的だということで片付けていいものだろうか。

耐震強度偽装事件は、年明け以降、報道量が激減した。マスメディアは冷めやすいという理由だけだろうか。幕引きを図ろうとする圧力が働いていないだろうか。未だに何も解決していない。方針や行方も分からないままなのに、このまま埋没してうやむやになるのだけは避けなければならない。

設計事務所を刑事告発

国土交通省は姉歯建築設計事務所に構造計算を依頼した元請けの設計事務所を、建築基準法違反の疑いで刑事告発する。告発対象は「スペースワン建築研究所、シノケン、エスエスエー建築都市設計事務所、木村建設、森田設計事務所、下河辺建築設計事務所」である。

建築基準法上、構造計算書は元請けの設計業者の名義で作成されるため、設計業者に偽造の認識があったかどうかにかかわらず責任が生じると判断している(「耐震設計偽造 国交省、月内にも刑事告発 姉歯建築士と6設計業者」産経新聞2005年11月21日)。設計者は元請であり、外注が勝手に偽造したとしても、その設計の全責任を負うことになる。設計を統括する意匠設計者に悪意がないなら、構造図を確認して是正させるべきであった。

国土交通省は耐震強度偽装事件で、耐震強度が不足しているすべてのマンションやホテルの元請け設計担当者について、建築士法に基づいて免許取り消しか業務停止の懲戒処分にする方針を固めた。処分を受けるのは約20人に上る見通しで、一つの事件としては前例のない大量処分となる(「元請け設計者全員を懲戒処分へ 耐震強度偽装事件で」朝日新聞2006年1月5日)。

建築確認申請書に自己が工事監理を行う旨の実態にそぐわない記載をした建築士は、建築主との工事監理契約のない場合であっても、建物購入者に対する不法行為責任がある(最判平成14年9月24日判例時報1801号77頁)。

元請け建築士の免許取消し

国土交通省は、耐震強度偽造問題で、元請け設計事務所の一級建築士8人の免許を取り消す懲戒処分を決めた(2006年1月24日)。姉歯秀次元一級建築士による構造計算書偽造を見逃した責任は重いと判断した(「国交省が一級建築士8人の免許取り消し、耐震強度偽造問題で」ロイター2006年1月25日)。「重大な過失があり多数の危険な建物を建てさせた」とする(「<耐震偽造>元請け建築士8人、免許取り消し処分 国交省」毎日新聞2006年1月24日)。

資格を取り消されたのは、姉歯秀次元建築士に構造設計を依頼した設計事務所と建設会社合わせて6社の一級建築士計8人である。エスエスエー建築都市設計事務所、木村建設東京支店、スペースワン建築研究所(2人)、シノケン東京支店、下河辺建築設計事務所、平成設計(2人)の建築士である(「8建築士の免許取り消し 元請け責任も重いと国交省」共同通信2006年1月24日)。

いずれの処分も中央建築士審査会が同意した(「元請け建築士資格取り消し=設計担当6社の8人−耐震偽装で中央建築士審査会」時事通信2006年1月24日)。国交省は、6社以外で偽装物件の元請けとなっていた建築士についても順次、処分を進める(「耐震強度偽装事件、1級建築士8人の資格取り消し処分」読売新聞2006年1月24日)。東京都は設計事務所としての登録抹消などの処分を行う方針である。

建築業界には法令軽視が蔓延

日経アーキテクチュアが実施した「構造計算書偽造事件に関する緊急アンケート」は法令違反が蔓延する業界の実態を浮き彫りにする。建築設計実務者の26%が「法令に違反しても構わない旨の指示を、関係者から受けたことがある」と回答する。「誰から法令に違反しても構わない旨の指示をされましたか」の問いには、回答者の74.5%が「建築主」と答えたが、「上司」と答えたものも11.4%あった(「26%が法令に違反しても構わない旨の指示経験、設計実務者調査」建設総合サイトKEN-Platz 2005年12月14日)。

建築設計実務者の13%が、「コストダウンの要請などで、脱法行為を犯してしまうほどの強いプレッシャーを感じたことがある」と答える(「13%が「脱法行為を犯すほど強いプレッシャー感じた」設計実務者緊急調査」建設総合サイトKEN-Platz 2005年12月13日)。

日経アーキテクチュアが読者を対象に実施したアンケート調査では「これまで大小にかかわらず、確認申請図書の偽造・偽装をしたことがある」と回答した人は12.7%も存在した。自由意見でも「ほかより経済的でないと言われ、仕事が来なくなるプレッシャーがある」など、発注者の声に対抗し切れない現状を嘆く声が数多く寄せられた(「違法を指示する建築主にやむなく屈する設計者も」建設総合サイトKEN-Platz 2005年12月28日)。

構造計算書偽造事件の責任

構造計算書偽造は殺人未遂である。地震が起きて建物が倒壊すれば、人が死ぬことは分かりきっている。新潟中越地震なみの地震が起これば倒れてしまうと分かっている建築物を平気で建てるとは、人命を何と思っているのだろうか。目先の己の利益を優先して、他の人の生命財産を無視する精神構造はどこから来ているのだろうか。

耐震強度偽装の問題の闇は深い。構造計算書偽装は人が安全に、安心して生活する権利を侵害する。人権侵害の問題として捉えることができる。経済優先の社会が歪んだスペシャリストを作り、それが社会につけとして返ってきた。

「人命よりも自分の収入や業界の要望を重視するようなやり方には、強い憤りを感じる」(「耐震性の偽造/「命の重み」を知るべきだ」神戸新聞2005年11月19日)。

「古代バビロニアのハンムラビ法典には「大工の建てた家が倒れて家の主が死んだら大工を殺す」という条文がある。建築は人命を預かる仕事だという緊張感が、古今を問わず求められている」(「命を脅かす犯罪だ」朝日新聞2005年11月19日)。

徹底的な責任追及がなされるべきである。「入居者や住民のために緊急策を肩代わりする形の自治体や国は、建築主らの責任を厳しく追及していくべきだ」(「素早い支援はいいけれど」朝日新聞2005年12月7日)。「何よりも公的資金を使う以上、業者の責任を棚上げしたままでは国民は納得しない」(「耐震偽造住民支援策 業者の責任追及も急げ」徳島新聞2005年12月8日)。

「グランドステージ東向島」がある墨田区では、「責任を問うべきはヒューザーやイーホームズ。税金を使ってほしくない」とする意見が大勢を占めている(「耐震偽装への税金投入批判、被害住民悩ます中傷も」読売新聞2005年12月18日)。

責任逃れ

マンション構造強度詐欺の責任は構造計算を行った設計事務所だけでない。設計にあたった姉歯秀次・一級建築士のみの問題ではない。マンションを建てた会社も、それをチェックするのが仕事の検査機関も、きちんと自分達の責任を果たさなかった。

元請け設計会社(スペースワン等)、建設業者(木村建設、サン中央ホーム等)、売主(ヒューザー、シノケン等)、検査機関(イーホームズ、日本ERI)の全てに責任がある。建て主、建築確認実施機関、施工、制度設計を行った国に至るまで、それぞれの立場において責任がある。いいかげんな検査機関の人間も含め、皆が共犯者である。ヒューザー、姉歯秀次元建築士、木村建設、イーホームズ、皆がコスト削減のグルの気がする。

「設計事務所の職業倫理が問われるは当然としても、責めを負うのはここだけだろうか。元請け・下請けの関係、検査機関、行政の責任…解きほぐすべき課題は多い」(「小社会」高知新聞2005年11月22日)。

「構造計算書偽造事件は、直接その行為に手を染めた人だけではなく、設計から施工に至る過程に関与した人々の匿名性を隠れみのにした不作為によって生じたといってよい」(野城智也「「家歴書」付け住宅流通を」朝日新聞2005年12月17日)。

「利益追求のためコストダウンを至上命題とする建築主や施工・設計業者、偽造を見抜けなかった国指定の確認検査機関…。建築確認制度そのものが問題をはらんでいる」(「不正の構図解明せよ」沖縄タイムス2005年12月7日)。

全部が全部、責任を背負う立場にあるのに、全員が逃げ腰、及び腰である。発注する民間企業も、設計・検査を受注する民間企業も、それらを監督する官庁も他人事であるような顔をする。確認できなかった、把握していなかったと言い逃れする。皆一様に責任を押し付けあい、なすりあっている。不動産業者も建設業者も検査機関も住民への安心の提供より先ず自分達の利益である。誰一人として責任を取ろうとするものはいない。

「ほかの機関や人間に責任を押し付け、自分は保身を図ろうとする。こんな無責任な人物が、人の生命や財産を守る住まいの建築にかかわっていたとは情けない限りだ」(「耐震強度偽造/真実はどこにあるのか」神戸新聞2005年11月30日)。

当事者が他人事のように振る舞い、互いに責任を押しつけ合う様子に被害者が憤り呆れるのは当然である。主張を聞けば聞くほど、関係者一同の人間性の低劣さが見えてくる。「グランドステージ茅場町」管理組合理事長は記者会見で「責任のたらい回しばかりで、あきれ、がっかりしました」と語る(「「偽装の原点」募る怒り」朝日新聞2005年12月15日)。

「建設業界に身を置くプロたちが、これだけ多くの偽装に気づかなかったことのほうが考えづらい。もし本当に知らなかったというのなら、職責を果たしていないのではないか。責任のなすり合いになっていて見苦しかった」(「責任感のなさが見えた」沖縄タイムス2005年12月15日)。

地震国日本で耐震強度偽装問題を起こしながら自らの保身を図る人達には企業人になる資格はない。「責任のなすり付け合い、トランプのババ抜きゲームを終わらせるには断固とした姿勢を示すしかない」(「ウソの証明」山陰中央新報2005年12月11日)。

「事の経緯を振り返れば振り返るほど人間の強欲、業の深さというものが浮かび上がってくる。欲望を道連れにして不正に手を染めた人物の行為は、浅ましくもある」(「塩水と富は渇きのもと」山陰中央新報2006年2月20日)。

日本の悪癖

耐震強度偽装事件は日本の建築が映画で使うハリボテ程度に過ぎないことを明らかにした。日本国、日本人、日本社会への世界の信頼を失墜させた問題である。いい加減な日本システム、それこそ太平洋戦争の敗北にも匹敵するような、欠陥日本システムを白日の下に晒した。

大事における日本政府の無策ぶりは世界各国の失笑を買っている。外国人の日本製品・技術に対する高品質神話を崩壊させることになる。「この騒動、崩壊していく日本社会を象徴しているのでは、と思ってしまう」(「耐震偽装で一斉捜索」中国新聞2005年12月21日)。

「あらゆる分野でこの国は、効率化という美名のもとにさまざまな手抜き仕事を積み重ね、経済大国という幻の塔を作り上げた」(天野祐吉「CM天気図」朝日新聞2005年12月22日)。「手抜き工事は今やこの国の文化的伝統のように見える」(加藤周一「夕陽妄語」朝日新聞夕刊2005年12月21日)。

「二カ月前のパキスタン地震では、高層マンションが倒壊した。現地を調べた日本の専門家は「鉄筋の密度など耐震構造に問題」と分析した。その言葉の裏に、日本ではありえないという誇りものぞくが、これからはとても胸を張れそうにない」(「正平調」神戸新聞2005年12月21日)。

戦後、高度成長期から今日に至るまで、安全性より経済性を優先する構造を営々と築いてきた。業務遂行を暗黙の了解、阿吽の呼吸で進める日本独特の文化から未だに抜け出せないでいる。「業界独特の「阿吽」が広がっているなら、第2、第3の手抜き工事があるのでは。不安が広がる」(「小社会」高知新聞2005年12月22日)。

建築確認制度の機能不全

耐震偽装問題の本質は、日本の根幹をなしている制度が持続不能に達しているという事実である。構造計算書偽装事件は不動産・建設業界全体に対する信頼を失墜させた。当事者を混乱に陥れただけでなく、消費者の専門家に対する信頼を破壊した。建築確認制度への信頼を根底から揺さぶる事態に戸惑いが広がるのは当然である。

確認検査制度への不信は根深い。衝撃的な事実の奥底に、日本全体を揺るがすさらなる恐怖が押し寄せていることを見逃してはならない。信頼が揺らいでしまったシステムを抜本的に見直すことなく、姑息的に対策を追加するだけでは状況は打開できない。

耐震強度偽装事件は、建築士のモラルの低下をはじめ、規制緩和で始まった民間検査機関の建築確認体制の杜撰さを白日の下に晒した。「国民の貴重な財産と安全を確保する制度が、気付かないうちに機能不全を起こしていた」(「耐震偽造 広がる被害対応急げ」中国新聞2005年11月27日)。

マンションは、その製造過程が密室で、身内だけの世界で行われる。それだけに安全性を維持するための防波堤として建築士と検査機関による誠実な業務遂行が求められる。しかし実態は、なれ合い・もたれ合いの状態で、互いのチェック機能が働いていない。欠陥建築問題は前々から存在しており、欠陥設計もあると考えるのが当然である。しかし検査機関はあり得ないことが起きたとして気付かなかったと言い訳する。

「マンションの耐震強度など安全性に関する情報は建設に携わる側が独占している。それでも消費者が安心してマンションを購入できるのは、建築確認というチェックシステムが働いているからである▼耐震強度偽装事件は、この情報の非対称性が悪用され、それをチェックできなかった」(「情報の非対称性」山陰中央新報2005年12月16日)。

「マンションの工事現場には、一般人は立ち入ることができないし、もし立ち入っても素人目には、その善し悪しはさっぱり分かりません」(橋本一郎、サラリーマンでもできるマンション投資・家賃収入で儲ける極意、明日香出版社、2004年、63頁)。

制度見直し

国土交通省は多数の偽造が見抜かれないまま建築確認に至った点を問題視する。国土交通省は社会資本整備審議会建築分科会に専門部会を設置する。再発防止策を検討するとともに、検査機関などには審査が形式的にならないよう注意喚起する(「建築確認審査を緊急調査 国交省が再発防止策検討」共同通信2005年11月18日)。

「規制緩和で適正な手続きにほころびが生じているなら、民間検査機関の業務の見直しも求められる」(「耐震強度偽造 他に背信はないのか」中国新聞2005年11月20日)。「審査結果に対するチェックの強化など、具体策を示さなければ、信頼は取り戻せない」(「耐震強度偽造 こんなでたらめが なぜ」信濃毎日新聞2005年11月25日)。

同業他社による事前チェック制度を新設することが、確認検査上のミスを防ぐ手段として最も有効と考える。構造設計は多くが一人で設計しており、他人による設計検証がなされてなく、ミスがあっても地震で倒壊するまでは発見できない。加えて工事監理者の職能を独立させるべきである。重要な部分だけでも、申請書に記された設計監理者と異なる、行政から指名された工事監理者が施工現場をチェックする方法を構築できればよい。

社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会構造計算プログラムプロジェクトチームの久保哲夫委員(東京大学教授)は「確認検査機関側で構造を再計算するのが、偽造を見抜く一番確実な方法ではないか」と話す(「建築界信頼回復への道筋(後編)」日経BP社SAFETY JAPAN 2006年2月22日)。

国による全棟検査実施へ

政府はマンションなどの耐震強度偽装問題に関連し、年内に実施する民間の指定確認検査機関の立ち入り調査の結果を踏まえ、国指定の48検査機関の評価をランク付けしたうえ、問題のあるランクの検査機関が審査した全国のマンションなどについては、耐震性の全棟検査を国の責任で実施する方向で検討に入った(2005年12月3日)。不適切な審査が判明した検査機関に対しては、速やかに指定を取り消す行政処分を行う等、厳しい対応を取る方針である。

国民の不安の広がりを抑えるためには、耐震性検査の費用の全部または一部を負担してでも、マンションなどの安全性を政府が確認する必要があると判断した(「国が48検査機関を格付け、問題審査は全棟検査実施へ」読売新聞2005年12月4日)。これにより、悪徳不動産業者や不良建設会社が淘汰されることを希望する。適正に検査が行われたら一体どれだけの欠陥マンションが出てくることか。国のチェックにおいても検査員を買収して、更なる不正行為が行われることのないよう、注視したい。

文書保存期間延長

設計事務所や民間検査機関には設計図書の保存期間が5年間と定められている。自治体には定められていない。姉歯秀次元建築士が関与した一部のビルなどの構造計算書が、文書保存期限を過ぎたため破棄され、全容解明が困難になる恐れが出ている。

北側国土交通相は設計事務所と民間検査機関、自治体の三者のいずれかで10年間は保存しておくよう制度を改める方針を表明した(2005年12月6日)。閣議後の記者会見で、「制度として(現在の)5年が本当にいいのか。瑕疵(かし)担保責任は10年。その整合性は今後の見直しのテーマだ」と述べた(「設計書類の保存期間、延長方針を表明 北側国交相」朝日新聞2005年12月7日)。

罰則強化

耐震強度偽装問題に関連する建築基準法の罰則は罰金50万円以下でしかない。強度偽装者は「偽装建物内に終身禁固」とすべし(「素粒子」朝日新聞夕刊2005年12月21日)。

小泉首相は「ちょっと軽すぎるのではないか。専門家に聞くと、刑法全体のバランスも考えなければならないというが、国民一般から考えると、釈然としないところがある」と述べ、罰則の強化が必要だとの考えを示した(「建築基準法の罰則、「ちょっと軽すぎる」…首相」読売新聞2005年12月7日)。

経済同友会の北城恪太郎代表幹事は記者会見(2005年12月6日)で、耐震強度偽造問題に関連し「建築基準法違反の罰則が最高50万円の罰金と言われているが、不正に対しては抑止力が働くぐらいの厳しい制裁が必要だ」と述べ、罰則を大幅に強化すべきだとの考えを示した(「不正には厳しい制裁を 耐震強度偽造問題で北城氏」共同通信2005年12月6日)。

被害者の怒り

建物付近に住む住民と購入した方々が不憫で仕方がない。被害者の無念は筆舌に尽くし難い。何千万円も出して入居した新築マンションなのに、「震度五で倒壊する恐れがあります」と言われたら、たまったものではない。購入されたマンションから追い立てられるように退去した方々には心休まる日々はないだろう。

構造計算書偽造事件によって大地震並みの難民が発生しつつある。何の過失もない幸せに暮らしていた家族が、路頭に迷うかもしれない局面に立たされている。住民は難民と化し、ローンをかかえたまま二重債務状態になって人生破綻の危機にある。仮住まい家賃とローンの二重負担、建替えとなると二重ローンに苦しむことになる。

耐震性に不安があることが判明した各地のマンション住民には、不安の声が広がった(「<構造計算書偽造>住民に広がる不安 ホテルは営業中止」毎日新聞2005年11月18日)。寝耳に水の住民は、ぞっとしたことだろう。住民が何時起きるとも知れない地震への恐怖に生きた心地がしないことは想像に難くない。

「何十年ものローンを組むなどしてマイホームを購入した住民らの怒りと不安は察するに余りある」(「耐震強度偽造 許されない背信行為だ」徳島新聞2005年11月11日)。

「不安と怒りは頂点に達しているだろうが、それ以前に信じられないという気持ちでいっぱいに違いない」(「国原譜」奈良新聞2005年11月25日)。

「偽装マンションを買った人は引っ越し、新たな借金、心労の三重苦に直面している」(「小社会」高知新聞2006年1月18日)。

「見かけは立派なマンション、ホテル。しかし、中の鉄骨などはか細いもの。強い地震でビル倒壊の危険をはらむ。マンション購入に大枚払った住民はたまったものではない」(「天地人」東奥日報2005年11月23日)。

東京都墨田区の11階建てマンションの一室を2005年1月に約4千万円で購入した住民は「半端じゃない大借金、多額のローンを抱えて・・・・・・悔しい」と怒る(「ローン抱え「悔しい」」朝日新聞2005年11月19日)。

都内下町の偽装マンション住民は「怖くて眠れない。家族を想うと仕事も手につかない。なのに、姉歯やヒューザーたちは“安全な場所”でぐっすり眠っているかと思うと、正直腹立たしい」と嘆く(「「やっぱり安過ぎたかも」居住者500世帯がローン難民に」週刊文春2005年12月1日号30頁)。

偽装物件の一つ「グランドステージ住吉」の八住庸平・管理組合理事長は「検査機関の確認が、存在意義もないほどずさんだったと、がく然とした」と話す(「耐震偽造 証人喚問見た住民は「無責任」「真相隠してる」」毎日新聞2005年12月15日)。

自己責任論の誤り

「耐震強度偽装の問題は、誰でも被害者になる可能性があった。「安物買いするから」と非難するのはおかしい」(長嶋修「劇場化進み繊細さ失う」朝日新聞埼玉版2006年1月1日)。自己責任論は一歩間違えれば、とてもアナーキーな無責任論となる。自己責任論は全て買う側がチェックし、自分の行動に責任を持ち、不利益を被ればそれは自己の責任として対処しなければならないという結論に行き着く。現代日本において「自己責任」という言葉は、強者が自分たちの所得の再分配を拒むための論理として濫用されている。

被害者が胸中を漢字一文字で表現

毎日新聞はグランドステージ各マンションの住民計10人に事件が発覚してから年末までの一カ月半の思いを、漢字一文字で表現してもらった。人生設計の激変を味わい「激」を挙げる住民や、「慌」「恨」など事件に振り回され苦しんだ住民たちの胸中が浮かび上がった。グランドステージ茅場町の男性は「止」の字。「11月17日から家族の時間が止まってしまった。平穏を取り戻したい」と言葉に詰まりながら語った。

グランドステージ千歳烏山の男性は、いつ地震が来るか怯える現状から「死」を選ぶ。GS池上の男性は、12月22日になってやっと大田区が現地調査を実施した現状を憤り、「遅」を挙げた。「不安のままの年を越すしかなく、ストレスが相当たまっている」といら立つ心境を語った(桐野耕一「<耐震偽造>「激」「慌」「恨」など住民が胸中を1文字で」毎日新聞2005年12月31日)。

被害者救済は進まず

耐震強度偽装事件の被害者住民への補償や救済の内容に進展は見られない。被害者住民は支援ではなく国の責任における賠償、補償を求めている。これは北側国交大臣の行政責任を認める発言からも、道理に適う主張である。実態の解明もなく、つかみ金の50億円を出せば済むと思っている政府のいい加減な対応を許すわけにはいかない。

居住者は不安をぬぐえないでいる。被害者は相変わらず不安定な状態である。「業者は本当に補償してくれるのか。このまま見捨てられるのではないか」(「危険性は同じなのに」朝日新聞2005年12月30日)。「国と都、建築主ら業者は責任の押し付け合いに終始しているように見える」(「偽装すり減る理事長」朝日新聞2005年12月31日)。

不安を募らす住民からは、業者だけでなく自治体の対応についても「緊迫感がなく、消極的だ」と非難が相次いだ(「倒壊危険マンションで説明 「自治体対応遅い」と非難」共同通信2005年11月20日)。「民間に委託するシステムを作ったのは国であり、国の責任は最も重い」と行政に対する不満や怒りが大きい(「所有会社、住民の退去要請=「命と財産を守って」−耐震計算偽造問題で説明会」時事通信2005年11月20日)。

被害者に対する自治体の対応は区々である。国土交通省は関係自治体に対し、震度5強程度の地震で倒壊の恐れのある分譲マンションの居住者に、転居後の家賃の全額を補助するよう要請している。神奈川県や千葉県は県営住宅の家賃を免除する方針を表明している。

転居先の家賃無料化を打ち出した神奈川県内では転居が進む一方、家賃補助が決まらない東京都内では転居が進んでいない。自治体の対応により、転居の進ちょく状況に格差が出ていることも明らかになった(「強度偽装分譲マンション、85%246戸が転居できず」読売新聞2005年12月14日)。

東京都は、強度不足から転居を求められた分譲マンションの住民への支援策として、公営住宅か民間住宅を問わず、移転先の家賃の3分の2を補助するものの、残りの3分の1については自己負担とすることを決めた(「家賃3分の2補助、強度不足で退去の住民向け…東京都」読売新聞2005年12月16日)。

グランドステージ稲城を抱える東京都稲城市は、イーホームズが出した建築確認は都が指導しており、市は偽装問題に責任を負う立場にないと主張する(「稲城市、支援に難色」朝日新聞2006年1月1日)。

北側一雄国土交通相の協力要請

自治体の足並みがそろわない現状に対し、北側国交相は閣議後会見(2005年12月16日)で以下のように述べた。「分譲マンションの建て替えまでは相当な期間がかかる。ぴたっと一致するのは無理かもしれないが、家賃補助額や期間において、結果として自治体間で格差が生じないよう国としても努力を続ける」。

北側一雄国土交通相は6日の閣議後の記者会見(2006年1月6日)で、耐震強度偽装で建て替えが必要なマンション住民への支援策に東京都などが難色を示していることについて「万が一、大きな地震があったときは行政の責任を問われるので理解してほしい」と述べた。改めて関係自治体に協力を求めた(「自治体に協力求める 耐震偽装支援策で国交相」共同通信2006年1月6日)。

損害賠償請求権の引き受け

国土交通省は危険な分譲マンションから退去を求められた住民に対し、行政側が支払った引っ越し代金や家賃補助などを建築主に請求する方法として、建築主に住民が持つ損害賠償請求権の一部を引き受け活用する方向で検討を始めた(2006年1月5日)。

違法マンションを建てた建築主に損害賠償請求できるのは、買い主である住民だが、住民の同意で譲渡が可能となる。引っ越し代金などは本来、建築主が住民に支払うべきだが、早急な退去が必要として政府は2004年12月、国と自治体が解体、建て替えなども含め肩代わりする支援策を決めた(「住民の賠償請求権を活用 偽装マンションで国交省」共同通信2006年1月5日)。

請求権が行政側に譲渡されれば建築主に対する損害賠償訴訟を「買い主(住民)、自治体、国の三者が共同ですることもあり得る」とする(佐藤信秋事務次官)。訴訟の住民負担を軽減するメリットもある。しかし、東京都は「債権が十分に回収できない可能性がある」と反対した(「建築主への損賠請求権…都、譲り受け案に反対」読売新聞2006年1月5日)。

金融機関の負担

被害を受けている分譲マンションの住民支援のため、金融機関にも一定の負担を求めるべきである。耐震強度偽装が確認された分譲マンションの居住者のうち、民間金融機関の住宅ローン利用者は190世帯で、借入金総額は65億円になる(2005年12月1日現在)。金融機関がローンを組む場合、マンションを担保にして貸し付ける。担保物件の資産価値を徹底的に見極められなかった責任も問われなければならない。

金融機関の負担を求める指摘に対し、北側国交相は「法律的には難しい」としながらも、「住民(生活)の安定確保の観点から必要に応じ検討したい」との姿勢を明らかにした(「姉歯氏以外も厳正処分 銀行の負担検討と国交相」共同通信2005年12月21日)。

金融庁は民間金融機関に返済の繰り延べ等の相談に応じるよう要請している。衆院国土交通委員会で日森文尋議員の質問に金融庁の佐藤隆文監督局長が答えた(「偽装分譲マンション住民 民間ローン65億円」朝日新聞夕刊2005年12月21日)。

「公費投入だけでなく、金融機関や不動産業界などに、責任にみあった負担や協力を求めるべきです」(榛田敦行「被害者救済などのために」マンションだより2005年4・5月号、日本共産党・東ひろたか事務所)。

民間基金構想

耐震強度偽装事件で、危険マンションを購入させられた居住者らの救済に向け、ゼネコンなど建設業界や経済界による基金・財団の創設構想が国土交通省内部で浮上した。同省関係筋が非公式に関係業界に打診している。マンション販売会社が倒産し被害回復できなくなった場合の措置で、同省側は民間主導の形をとらせたい意向である。これに対し関係業界は難色を示している(「耐震偽装 民間主導で救済基金 国交省打診、業界は難色」産経新聞2005年1月3日)。

マンション業者の責任で賠償するのが筋である。しかしマンション業者が倒産した場合は賠償できず、被害者は救済されない。この場合は業界全体で負担するという考えには一定の筋が通る。但し業界を一足飛びにして経済界全体に拠出を求めることは無理がある。不動産業界と無縁の企業が負担することになるからである。ニューエコノミーが日本の悪癖ともいうべき旧態依然たるオールドエコノミーの尻拭いをさせられることになる。これは正義公平に反する。基金拠出を求めるならば不動産業界、建設業界、住宅ローンを扱う銀行等に限るべきである。

住民の転居は進まず

耐震強度偽装問題で、震度5強程度の地震で倒壊の恐れがある分譲マンション9棟の計290戸中、約85%にあたる246戸にはまだ住民がとどまっていることが、国土交通省のまとめでわかった(2005年12月13日)。

希望する住宅の抽選に漏れた住民は年の瀬も迫り、「退去を迫られても行き場がない」と困っている(「<耐震偽造>「環境変えず余生を」条件かなう転居先少なく」毎日新聞2005年12月15日)。

「コンアルマーディオ横濱鶴見」管理組合役員は「一番悲惨なのは住民が出て行って、マンションを取り壊したあと、建て直しのめどがたたずに、それで終わりになってしまうことです」(「耐震偽装 被害者の年の瀬」朝日新聞2005年12月17日)。

耐震強度偽装事件ニュース

別件逮捕と見込み違い

強制捜査開始当初、警察は「ヒューザー、建築士、木村建設、イーホームズ、総研が共謀してマンション購入者、ホテルオーナーに耐震強度の足りない物件を騙して売りつけた」という構図を描いて関係者の逮捕に踏み切ったとされる。

しかし、総研の立件は見送られ、逮捕された9名のうち3名は起訴されず、起訴された6名のうちでも耐震偽装に関わる罪状で起訴されたのはヒューザーの小嶋被告(詐欺罪)、木村建設の木村被告と森下被告(詐欺罪)、元建築士・姉歯被告(建築基準法違反)の4名にとどまった。事件の核心とは無関係な別件で9人も逮捕しておきながらである。

世間を騒がせた事件について、あれほどの大がかりな構図を描き、それに基づいて多くの関係者を別件で逮捕しながら、「本丸で起訴できたのはこれだけでした」というのは問題である。捜査側は見込み違いについて明確に説明すべきである。

捜査当局は耐震強度偽装事件を姉歯秀次元建築士の個人的犯行としたがっているが、それで施工会社(木村建設等)、設計元請け、事業主(ヒューザー等)、総研、検査機関(イーホームズ、日本ERI等)、地方自治体に罪がなかったわけではない。偽装に気付かなかったこと、もしくは薄々気付いていながら、あえて見逃したこと自体が罪である。姉歯被告と同様、無能とモラルの低さ(能率・経済至上主義)に起因する。

「捜査は尻すぼみの感は否めないが、これで幕引きにはできない」(「耐震偽装事件 住まいの安心取り戻せ」信濃毎日新聞2006年6月30日)。
「問題を元一級建築士個人の犯罪で終わらせるわけにはいかない」(「耐震偽装事件/安全・安心の追求はこれからだ」神戸新聞2006年7月2日)。

グランドステージ川崎大師住民、損害賠償提訴

耐震強度が偽装された川崎市川崎区の分譲マンション「グランドステージ川崎大師」(23戸)の全世帯住民計33人が建て替え費用など総額7億5000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した(2006年6月27日)。既に6月23日に提訴の方針が発表されていた。

元一級建築士・姉歯秀次被告、設計元請けのスペースワン建築研究所(清算手続き中)と同社の元一級建築士、施工業者の太平工業(東京都中央区)、川崎市に対し請求する。耐震偽装問題でマンション住民が提訴に踏み切るのは初めてである。

川崎市の調査では、同マンションの耐震強度は基準の30%しかない。住民はマンション建設に不法行為があったと主張し、各被告に賠償を求める。姉歯被告は「故意に耐震強度の劣る構造計算書を作成した」。スペースワン建築研究所は「強度不足の設計図を作成した過失がある」。太平工業は「危険な建物を施工した責任がある」。

川崎市には民間の指定確認検査機関「イーホームズ」が行った建築確認の事務責任があるとする。最高裁が2005年6月に「民間の指定確認検査機関が行った建築確認は、自治体が行ったものとみなす」との決定を出したことから、イーホームズが強度不足を見逃した責任を追及できると判断した。

「<耐震偽造>GS川崎大師の住民が賠償提訴 姉歯被告らに」毎日新聞2006年6月27日
「マンション住民、初の提訴=姉歯容疑者らに7億5000万円−東京地裁」時事通信2006年6月27日
「GS川崎大師住民が提訴 耐震強度偽装で初」共同通信2006年6月27日
「耐震偽装問題、マンション住民が初の損害賠償提訴へ」読売新聞2006年6月24日

太平工業株式会社の耐震強度偽装物件

グランドステージ川崎大師
工期 : 平成15 年9 月〜平成16 年10 月
構造・規模 : RC造 9 階建 23 戸
工事場所 : 川崎市川崎区中瀬3−21−7

グランドステージ下総中山
施主 : 株式会社ヒューザー
設計・監理 :株式会社スペースワン建築研究所
確認検査機関 : 日本ERI
工期 : 平成14 年4 月〜平成15 年2 月
構造・規模 : RC造 9 階建 23 戸

グランドステージ溝の口
施主 : 株式会社ヒューザー
設計・監理 : 株式会社森田設計事務所
確認検査機関 : イーホームズ
工期 : 平成15 年4 月〜平成16 年2 月
構造・規模 : RC造 7 階建 24 戸

グランドステージ豊田
施主 : 株式会社ヒューザー
設計・監理 : 株式会社森田設計事務所
確認検査機関 : 日本ERI
工期 : 平成14 年9 月〜平成15 年8 月
構造・規模 : RC造 9 階建 49 戸

エクセルダイア南蒲田
施 主 : 東邦ハウジング株式会社
設計・監理 : 株式会社下河辺建築設計事務所
確認検査機関 : 日本ERI株式会社
工期 : 平成14 年7 月〜平成15 年7 月
構造・規模 : RC造 地下1 階 9 階建 32 戸

グランドステージ東向島も提訴

耐震強度偽装問題で、強度が基準の31%であったグランドステージ東向島(東京都墨田区)の住民が2日、同区内で集会を開き、民間の指定確認検査機関イーホームズ(指定取り消し)と、建築確認の責任を負う特定行政庁の墨田区などに対し損害賠償を求める訴訟を起こす方針を確認した(2006年7月2日)。

住民によると、他に訴えるのは、構造計算書を偽造した元建築士の姉歯秀次被告、元請け設計業者のエスエスエー建築都市設計事務所。売主と施工業者のヒューザーと木村建設は破産手続き中で、既に債権の届け出を済ませており、訴えには含めない(「「東向島」の住民も提訴へ 耐震強度偽装マンション」共同通信2006年7月2日)。


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